「注文した商品がすぐに届く」というサービスの特長を社名に取り入れたEC大手のアスクル。事務用品や生活用品などの販売で知られる同社だが、EC市場の拡大に伴い、メディカル用品や工場資材など、さらに幅広い分野へと取扱商品を広げているところだ。そんな同社は今、DXを導入した大胆な変革に取り組んでいるという。
2月21日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 DX Frontline for Leaders 変革の道標」には、同社 執行役員 CDXO テクノロジー本部長の池田和幸氏が登壇。ECが抱える構造問題や、その解決に向け同社が取り組むDXの具体的な施策について解説した。
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10カ所の大型拠点で実現する独自のEC物流
アスクルの事業は、事業所向けに必要な商品を販売するBtoB事業と、個人向けECサイト「LOHACO」で飲料や食料、日用品などを販売するBtoC事業が中核となっている。1992年のサービス開始当初は事務用品500アイテムだった取扱商品は、オリジナル商品、生活用品へと拡大し、現在は工場で使われる工具や資材といったMRO(maintenance, repair and operations)や、医療介護現場で使うメディカル品も扱う。さらに2022年には、中小企業のDXを推進するためのサービスや、DXのノウハウを提供する「ビズらく事業」もスタートさせた。
EC物流については「独自の仕組みがある」と池田氏は説明する。注文当日から翌日に全国配送をするための基盤として全国に大型の物流拠点が10カ所あり、倉庫内の搬送を自動で行うロボットやラベル貼りロボットなど、高度に自動化された設備が稼働しているのだ。また、在庫の保管から出荷、設備メンテナンスまで全てを自社で行っている点も大きな特長と言える。
2022年11月には、これまでの物流の取り組みで得た知見や新しいテクノロジーを活用した最先端の物流センター「ASKUL東京DC」も稼働を開始している。ここでは、荷物の大きさや重さなどの条件に沿って配送先の方面別に自動的にパレットへの積み付けを行うシステムを導入し、省人化、高速化を実現した。また、物流センターとしては異例の9.9メートルという天井高をフルに使う自動倉庫も導入。省スペースで上下フロアの搬送も可能なスパイラルコンベアを採用するなど、空間の使い方を工夫した結果、より多くの商品を在庫として保管できるようになっている。