島津製作所は3月22日、2023年度-2025年度の3か年に向けた中期経営計画を策定したことを発表した。
同社の山本靖則 代表取締役社長は、この新たな中期経営計画について、「科学で社会の役に立つという志、その中でも“Excellence”が必要であるとの考えから、顧客中心の課題解決型企業を目指してきた」とし、最終的な目標である「お客様の夢に、私たちの夢を重ね、努力を加えて“共感あふれる社会”を創りだす」ことを成し遂げたいという思いを込めて策定したと説明する。
そんな同社は、「ヘルスケア」「グリーン」「マテリアル」「インダストリー」の4つの事業領域で事業拡大を目指すとしており、それぞれの領域に対し、提供する社会価値として、ヘルスケアでは「分析・計測と画像診断技術による“人の命と健康”への貢献」、グリーン領域では「分析・計測と制御技術による“地球の健康”への貢献」、マテリアル領域では、「計測・解析と真空技術による“材料開発・生産革新”への貢献」、インダストリー領域では「精密加工・計測技術による“産業の発展”への貢献」を掲げる。
また、今回の中期経営計画の位置づけとしては、事業拡大に加え、顧客中心の執行体制への変更を掲げるとする。これまでやってきたことは、顧客が必要とする技術を開発して提供するというものであったが、本当に顧客が必要なのは製品のみならず、そこから得られるデータでもあるという考えに至り、前処理、消耗品、ソフトウェアなども組み合わせたトータルソリューションを提供する企業になることを6年間、2度の中期経営計画で目指していきたいとする。
新たな中期経営計画の基本的な方針としては、コンセプトは、これまでの取り組みを引き継ぎ、技術開発力に加えて、社会実装力をセットにして両輪で強化していくことで持続的な成長を果たしたいとする。ターゲットとしては、2025年度で売上高5500億円、営業利益800億円、営業利益率14.5%としており、この実現のための5つの事業戦略として「重点事業強化 -LC、MS、GC、試験機、TMP-」「メドテック事業の強化」「海外事業の拡大 ‐北米強化‐」「リカーリングビジネスの強化、拡大」、そして「新事業・将来事業の創出」を挙げている。
重点事業の強化としては、例えば液体クロマトグラフ(LC)と質量分析計(MS)の販売拡大については、実験計画から解析まで、業務の自動化・省人化をトータルソリューションとして提案するほか、AIの活用で属人性の解消を図りつつ、ラボ運営を支援することを目指すとする。また、北米での事業強化として、北米R&Dセンターにおけるパートナーとの共同研究・開発を推進するほか、メソッド開発を担う製薬開発センターを東海岸に2024年度、西海岸に2023年度にそれぞれ設立する予定としている。
グリーンについては、「バイオものづくり」「新エネ・省エネ・蓄エネ」「環境・規制」「マテリアル・次世代モビリティ」の4分野に注力。メドテック事業の強化については、医用機器についてはAIやIoTによるイメージングトランスフォーメーション(IMX)の展開、液体検体用臨床検査システムの実装と検査試薬の拡充などを図っていくとする。海外事業の拡大としては、北米を中心に、それぞれの国・地域に応じた市場特性に応じた顧客サポート体制の強化を図ることで、販売からサービスに至る最適なトータルサポートの提供を図っていくとする。リカーリングビジネスの強化・拡大については、グローバルでのサービス体制の強化と保守部品販売の拡大、メンテナンス契約の拡大を進めていくほか、試薬などの消耗品の商材開発・拡充による事業拡大を図っていくとする。
そして新事業・将来事業の創出については、注力分野として「先端計測」「AI」「革新製造」「脳・五感」「革新バイオ」を挙げており、将来的には量子技術の活用など、今後、求められるであろうさらなる高精度計測・分析を実現する技術開発を進めていくとしている。
このほか、経営基盤の強化項目として「ガバナンスの強化」「開発スピード強化」「国際標準化、規制対応力の強化」「グローバル製造の拡大」「DX推進」「人財戦略:島津人の育成」「財務戦略:攻めの財政へ」の7つを挙げている。
また、研究開発費は3年間累計で2022年度で終了する中期経営計画が510億円であったのに対し730億円に増額。この額は同社の研究開発費としては過去最高額となるという。設備投資についても2022年度終了の中期経営計画が549億円に対し800億円へと引き上げる予定で、これらの取り組みを通じて事業競争力の強化を図っていくとしている。