IHIと米・ノースロップ・グラマンの両者は3月15日、宇宙における安全保障への貢献を目指して、宇宙状況監視などで必要とされる小型・高機動人工衛星の日本への提供に向けて連携・協業する覚書を締結したことを共同で発表した。

  • 左から、防衛装備庁装備政策部の萬波学部長、IHI 航空・宇宙・防衛事業領域副領域長 兼 IA社長の並木文春氏、ノースロップ・グラマン・スペース・システムズ ナショナル・セキュリティ・システム担当バイス・プレジデント(副社長)のトロイ・ブラシア氏、ラーム・エマニュエル駐日米国大使

    左から、防衛装備庁装備政策部の萬波学部長、IHI 航空・宇宙・防衛事業領域副領域長 兼 IA社長の並木文春氏、ノースロップ・グラマン・スペース・システムズ ナショナル・セキュリティ・システム担当バイス・プレジデント(副社長)のトロイ・ブラシア氏、ラーム・エマニュエル駐日米国大使(出所:NRG Webサイト)

気象衛星や放送・通信衛星、また全球測位衛星システムやその一種である準天頂衛星など、低軌道から静止軌道までの地球を周回する数多くの衛星は、現代社会になくてはならない重要なインフラだ。

これら衛星に対するサービス事業も始まり、静止軌道を友好的に移動する衛星がある一方で、動き回る挙動不審な衛星も増えているとされる。このため、2022年12月に制定された「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」にも、持続的な経済活動と安全保障の双方の観点から、宇宙領域把握の体制強化や宇宙状況監視衛星の必要性が明記されている。

今回IHIとノースロップ・グラマンは、日本および米国、さらにはグローバルな宇宙安全保障に貢献するため、ノースロップ・グラマンの既存の衛星バス(各種人工衛星で共通の基本構造)を利用して、宇宙状況監視などに求められる小型・高機動性を有する衛星の日本への提供を目指し、連携して活動を行うことで合意した。

IHIは10年以上にわたり、自社設備を利用して安全な衛星運用のための宇宙状況監視サービスを行っており、宇宙物体、特に近年の静止軌道帯の衛星の動きには大きな関心を持ち、知見を蓄積させている。また、グループのIHIエアロスペース(IA)は、ノースロップ・グラマンが製造する人工衛星・宇宙船に対して推進装置を長期間にわたって提供しており、両社の間には相互の信頼感に基づく深い協力関係がすでに構築済みだという。

一方ノースロップ・グラマンは、10年以上にわたり、宇宙環境を監視し、軌道上物体の探知・識別などを支援する地上および衛星製品を提供し続けており、国際的な実績を有する。

今回の覚書締結にあたり、IHI航空・宇宙・防衛事業領域 副領域長兼IA社長の並木文春氏は、「昨今、他国の軍事状況や能力把握のためさまざまな試みが行われており、安全保障上の脅威となっている。宇宙においても、不審衛星の識別と脅威把握は喫緊の課題と認識している。ノースロップ・グラマンは本分野で経験と実績を持っている。IHIグループとノースロップ・グラマンは協働の長い歴史もある。課題解決にあたって、ノースロップ・グラマンは最高のパートナーであり、協力して宇宙の安定的利用に貢献していく」と連携の意義をコメントした。

また、ノースロップ・グラマン ナショナル・セキュリティ・システム部門トロイ・ブラシア副社長は、「IHIとの提携は、日本の宇宙ビジネスにおけるIHIの長い伝統とノースロップ・グラマンの宇宙領域監視における比類ない経験を組み合わせることになる。日本向けの適正な価格で効果的な宇宙状況監視ソリューションのため、共に速やかに協力を進めていきたい」と述べている。

IHIとノースロップ・グラマンはこの連携により、ますます重要になる宇宙、特に静止軌道で持続的な宇宙活動とグローバルな宇宙安全保障への貢献に向けて、協力して取り組んでいくとしている。