NTT東日本グループのNTTタウンページがデジタル戦略を進めている。その主軸となるのがデジタルマーケティングサービス「NTTタウンページ Digital Lead Powered by Wix(以下、デジタルリード)」だ。同社は同サービスにおいて、これまで電話帳事業で培った地元密着型のサービス提供ノウハウをデジタルで再現している。顧客のデジタル化だけでなく、同社の人材もデジタルを学びスキルアップにつながっているという。
今回、デジタルリードを担当するメディア運営部 デジタル部門 サービス企画担当の岩崎真歩氏、米増完氏に話を伺った。
電話帳の顧客をデジタルマーケティングの世界へ
NTTタウンページが「デジタルリード」を発表したのは、2019年9月。
インターネット電話帳として提供してきた「iタウンページ」からさらに踏み込んだデジタルマーケティングサービスである「デジタルリード」を提供し、世の中の流れに合わせて、中堅中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援していく。
「ホームページを起点とし、集客から成約までをワンストップで支援をするサービスです」という岩崎氏の言葉通り、ホームページの制作から集約・成約に向けた運用、SEO対策など、基本的な機能とサービスを備える。Web制作プラットフォームを提供するWix.com Ltd.(以下、Wix)と戦略的業務提携を締結し、NTTタウンページが日本市場向けのテンプレートやコンテンツを加えた。
料金は登録料が5500円(税込)で、初期制作費は無料。3つある基本プランのうち、ページ数を4~5枚とした「スタンダードプラン」は月額1万6500円(税込)で利用可能だ。ヒアリングからホームページの開設まで、約1カ月で完了する。
「デジタルリード」の3つの特徴とは
岩崎氏によると、「デジタルリード」の特徴は大きく3つあるという。
1つ目は、豊富なサービスラインアップ。ホームページを軸に、EC、SNSニュースフィード、見積依頼、メールキャンペーン、予約などの機能も必要に応じて追加できる。「集客や成約に結びつく機能をそろえており、デジタルリードをサービスプラットフォームとして、顧客の目的や要望に合わせて自由自在にカスタマイズできます」と岩崎氏。
2つ目はデザイン性。「ホームページを見てもらわないことには意味がないので、多くのユーザーに目をとめていただけるような洗練されたデザインを実現しています」と岩崎氏は語る。実際に、顧客からの評価も高いそうだ。
3つ目は、充実したフォロー体制だ。岩崎氏は、「約1200人の従業員がおり、営業拠点は全国に9カ所あります。こうした豊富な人的リソースを活用して、最初のコンタクトから運用後のフォローまで、きめ細やかなサービスを提供できます」と述べる。ここは、過去23年間で21万件のホームページの企画と制作を手掛けてきたiタウンページでのノウハウや知識が生きているようだ。
このような特徴が受け入れられ、中堅・中小企業を中心に、開始から3年4カ月で契約数は3万件を上回っているという。
70代の店主が営む蕎麦店ではWebから160件の予約も
そもそも、NTTタウンページが「デジタルリード」を開発・提供するのはなぜか?
多くの中堅中小企業は、デジタルマーケティングの必要性を認識している。ただ、人手不足やITに詳しくないといった理由で「やりたいけどやれない」という課題があり、その層は、同社がタウンページやiタウンページを提供する顧客層と非常に親和性が高い。
「中堅中小の事業者をサポートすることは、われわれのミッションの一つ。デジタルマーケティングを本気で展開しなければならないが、この市場の動きは速い。簡単にできるものが求められていると感じました」(岩崎氏)というニーズがある
そのような状況の中で、同社が提供しているiタウンページの利用者からも「こういう機能はできないのか」という要望が増えたという。米増氏はiタウンページが抱えていた課題を次のように話す。
「iタウンページは2種類のテンプレートで作っていくため、カスタマイズ性に限りがありました。そのため、デジタルリードの提供にあたっては、最先端のホームページが作成できるように、いろいろなベンダーを検討しました。ここは苦労した部分です」
検討した結果、「洗練されたデザインができ、顧客の悩みに合わせたサービスを提供することができる」(米増氏)という理由から、Wixを選んだ。
こうした課題を乗り越え、デジタルリードはさまざまな業態に利用されている。税理士・弁護士などの士業、個人病院、飲食店、宿泊、寺院など、さながらタウンページを見るようだが、その中に70代の夫婦が営む宮城県の蕎麦店もある。
この蕎麦店はそれまでホームページを持たず、予約は電話で受けていた。リニューアルを機に「デジタルリード」を導入してホームページを開設。開店から2カ月で3000人以上の閲覧があり、予約フォームから160件の予約が入るなどの効果があったという。
このような顧客の成功を裏付けとして、顧客と良好な関係を継続できているようだ。
顧客の成果獲得に向け社員のデジタルスキルもアップ
顧客に提供するものが紙からデジタルへ変化することに伴い、同社の社員のデジタルスキル向上も進めてきた。「社員のデジタルスキルアップは継続して実施しています。事業主と一緒に成果を上げていくというイメージです」と岩崎氏。
岩崎氏も米増氏も、Webサイトの改善点をアドバイスできる「ウェブ解析士」の資格を取得している。
NTTタウンページはこのような”草の根のデジタル化”を、今後も進めていく。9つある拠点を生かして、地方の顧客からのニーズを汲みとり、サービスに反映させていきたいという。
「お客様の集客と成約をどんどん伸ばしていく、サービスラインアップを拡充していく、この2つに取り組み、地域創生に貢献していきたいですね」と、地域創生に向けた熱い想いを岩崎氏は語っていた。