公益財団法人 九州大学学術研究都市推進機構(OPACK、福岡市)が3月9日に開催した「ヘルステック価値創造のためのデータ駆動型アプローチによる挑戦 九州大学オーピンサイエンスプラットフォームの成果」にて、難解な医療系デジタル・トランスフォーメーション(DX)を基盤とする“データ駆動型医療”の成果普及の一環として、一般市民向けにその研究開発成果・構想を分かりやすく伝える場となる「いとしま免疫村」構想を公開した。
九州大学(九大)大学院工学研究院応用化学部門の片山佳樹 教授など中心になって約2年間にわたって議論を進めてきた医療系DXを基盤とする“データ駆動型医療”の中身は、一般市民にとっては難解な部分も多い。そのため同イベントでは、九大大学院 芸術工学研究院の池田美奈子 准教授が「いとしま免疫村」構想として、一般市民が“データ駆動型医療”によって受ける恩恵などの説明を行った。
九大の多くの学部や大学院がある伊都キャンパスは、福岡市の西区本岡にあるが、そのすぐ西側は糸島市になるため、農業や漁業が主体の糸島市との地域連携などが盛んになっている。この“地元”ともいえる糸島市内に、「いとしま免疫村」という名称の先端研究成果に裏付けられた“テーマパーク”を糸島市民と一緒につくって行きたいと池田准教授は提案した(図1)。
この“いとしま免疫村”構想の中では、商品・サービス開発プロジェクトとして、「市民の免疫のバランスを保って健康を維持できるサービスや商品を、企業の専門家と大学の研究者、そのユーザーが一緒になって開発する場を設ける」という。糸島市は漁業や農業が盛んな地域だが、健康診断の受診率はあまり高くないという課題を抱えているため、新鮮な海産物や農産物を使った免疫を高める食品などを開発する中で、「健康になる楽しい商品開発プロジェクトを進めることによって“免疫”を意識する近未来像を実現したい」という。
同時に食材の宝庫の糸島市では、地元の食材を用いたレストランを開設し、かつ“免疫ソムリエ”などが助言する食材を食べることで、免疫の仕組みを学んだり、時々開設する“免疫クッキングスクール”(図2)を通して、「新しい免疫レシピを学ぶなどの場をつくりたい」という。
“いとしま免疫村”にある図書館には、カフェも併設し、「このカフェでサイエンスカフェも開催し、カジュアルな雰囲気の中で、科学を学び情報交換をする場としたい」と説明する。図書館には、さまざまな分野の本をそろえているが、もちろん免疫の研究書などもそろえておくと説明する。
免疫村には、スーパーマーケットも併設し、免疫を高めるライフスタイルをサポートする食品・商品なども取りそろえるとも説明しているほか、メタバースシアターも併設し、普段、免疫村に来れない市民に向けても健康につなげられる場にしたいと説明しており、そうした免疫村構想の実現を通じて、「大学の研究成果を一般市民に伝える場としていきたい」としている。