公益財団法人 九州大学学術研究都市推進機構(OPACK、福岡市)は3月9日、東京・日本橋にて「ヘルステック価値創出のためのデータ駆動型アプローチによる挑戦 ~九州大学オープンサイエンスプラットフォームの成果~」を開催し、九州大学(九大)大学院工学研究院応用化学部門の片山佳樹 教授(図1)などが中心になって約2年間にわたって議論を進めてきた医療系デジタル・トランスフォーメーション(DX)を基盤とする“データ駆動型医療”などを公表し、その近未来像などを解説した。「このデータ駆動型医療などを実現する産学連携活動に参加する企業や個人の新加入を求めている提案として、この講演会を開催した」と、OPACKは説明している。
同講演会では、九大大学院工学研究院応用化学部門の藤ヶ谷剛彦 教授がこれまで議論し実施してきた「オープンサイエンスプラットフォーム」活動として「具体的なデジタル・トランスフォーメーション型アイデア創出手法」と題する講演を通して、「マテリアルDXや医療DXなどを議論し、教育と研究の連携基盤をベースにしたオープンサイエンスプラットフォーム(OSP)というコンソーシアムでの産学連携活動を続けてきた」と語った。
このコンソーシアムでの産学連携活動成果として、片山教授は「日本では2025年以降は高齢者の急増と現役世代の急減という人口減少に直面し、日本の現在の医療システム・社会保障システム(国民皆保険など)が破綻する可能性が高まる」と警告を鳴らし、これを防ぐためには、現在の「治療する医療」から「病気を防ぐ医療」に移行する必要があり、「“病気にならない医療”、“病気のなっても進行させない医療”を実現することが不可欠になり、医療DXの実現が不可欠になる」と解説する。
これを実現するには、「各人のライフスタイルや体質が異なることを基本に、超個別化医療を可能にするデータサイエンスと各個人の個別のリスク因子とその対処法を可能にするデータ駆動型ラーニング・ヘルス・システムなどを目指す医療デジタル・トランスフォーメーションを実現する」とし、そのためには「病態情報による個別化のPhenomeデータ、遺伝子情報による個別化のGenome・Omicsデータ、環境・生活習慣情報による個別化のExposomeデータなどを基盤とした超個別化医療を実現し、これを基にした健康サービスを実現する」と、近未来像を説明する。
具体的には、個人情報を消去せずに個人とデータがつながるシステム構築(秘密保持を別の手法で確保して)と、疾患関連因子探索のための解析手法を実現して「超個別化医療」を実現するとしている。この「超個別化医療」は個人の先天的・後天的全因子を考慮した健康状態・将来の健康リスクを判定する医療を実現すると解説する。
これを可能にするLearning Health Systemとして図2を提示した(図2はまだ提案段階階のもの)。また、Learning Health Systemを実現する医療DXとして図3を示した(図2、図3は医療DXを実現する議論過程での考えを整理する図である)。