日立製作所(日立)は3月10日、記者会見を開き、2024年度の新卒採用計画および2023年度入社の経験者採用計画を発表した。新卒採用と経験者採用の比率を初めて1対1とし、大学・大学院・高等専門学校の卒業予定者を600名、高等学校の卒業予定者を50名、経験者を600名、合計1250名を採用する予定。
そして、日立は今回の新卒採用から、面接時に「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を聞くことをやめるという。
「24年卒の学生は、大学に入学してからずっとコロナ禍で対面の活動が制限されており、学生時代の取り組みを語ることが難しいはず。従来の選考からキャリア志向や実際の職務遂行能力などを自らアピールできる、ジョブ型に即した選考への転換が必要だと考えた」と、人財統括本部 タレントアクイジション部長の進藤武揚氏は、採用方法の転換の背景を語った。
ガクチカを聞く代わりに、最終選考では、学生が5分間自由なプレゼンテーションを行う。「入社後、どの職種で、日立のリソースを用いてどのように社会課題の解決に取り組みたいか。また、それはなぜか」といった内容で、方法は問わずプレゼンしてもらうものだ。その後、プレゼン内容に関する質疑応答も面接中に行う。
「日常業務に近いプレゼンとその後の質疑応答の形式をとることで、論理的思考力、課題発見力、解決構想力などの価値創出に必要となる能力を測る。加えて、本人の志向や希望職種とのマッチングも的確に把握することができる」(進藤氏)
この新たな面接手法のトライアルを昨年経験した内定者の冨島沙織さんは、「準備に時間はかかりましたが、図や写真を用いたプレゼン形式の面接のおかげで、自分の想いが漏れなく面接官に伝わりました。ガクチカは、過去の自分を過大評価してしまいがちですが、『何を成し遂げたいか』というこれからのことに関しては、噓偽りなく堂々と話せました」と、新しい面接のスタイルを好意的に受け止めていた。
また、日立は専門人材の育成支援と採用も、長期・有給インターンシップ(2カ月以上)を通じて強化していく。具体的には、将来の就職を見据えた博士課程学生に、日立の研究所で就業の場を提供する。同制度は2021年度より導入しており、これまで22名の学生を受け入れている。今後はさらに拡大する方針で2023年度は30名の受け入れを目指す。
「日立にとって人材は最も大切な資本。ジョブ型の人材マネジメントと柔軟な採用を通じて、多様な人材が活躍できる組織を作っていきたい」と、進藤氏は意気込みを述べた。