日立ソリューションズは3月9日、同社が提供する人事総合ソリューション「リシテア」シリーズに、女性従業員が月経や妊娠、更年期など体の不調や不安に早期に対処できる「リシテア/女性活躍支援サービス」を3月22日から追加し、フェムテック市場に参入すると発表した。

同サービスでは、女性従業員が、直接ビデオ通話で周産期医療機関である葵鐘会(きしょうかい)に所属する看護師や助産師に対して女性特有の健康に関する相談ができる。所属企業を通すことなく直接相談ができる点が特徴だ。導入企業は、女性従業員が体の不調に早期に対処できるようになり、仕事のパフォーマンス向上や心理的安全性の確保にもつながる。

日立ソリューションズは、女性活躍を推進している中堅以上の企業を中心に同サービスを展開し、2025年には年間約5億円の売り上げを目指す。

  • 「リシテア/女性活躍支援サービス」サービス概要

    「リシテア/女性活躍支援サービス」サービス概要

総務省の労働力調査結果(2022年)によると、労働力人口に占める女性の割合は約45%だという。10年前と比較すると、新卒採用の女性比率は1.7倍、全従業員の女性比率も約1.4倍増加している。また、2023年3月期決算から対象の上場企業は「人的資本」の開示が義務化され、女性管理職比率や男女間賃金差なども公開しなければならない。

  • 働く女性は急激に増加

    働く女性は急激に増加

今後も女性の活躍は進むと見込まれている一方で、就労期間中(一般的に10代後半~60代半ば)に女性は特有のさまざまな健康問題のリスクを抱えている。症状を自覚していても、周囲に相談できなかったり、病院へ行くべきか分からなかったりして仕事のパフォーマンスが低下しているケースも少なくない。経済産業省の調査によると、56%の女性が女性特有の健康課題や症状で職場で困った経験があると回答している。

  • 女性特有の健康問題

    就労期間中も女性は特有の健康問題を抱えている

また、経済産業省によると、離職や昇進辞退、勤務形態の変更などを余儀なくされていた女性がフェムテックにより仕事との両立を果たすことで得られる経済効果は約2兆円と試算されている。

  • フェムテックによる女性就業率の維持と経済効果

    フェムテックによる女性就業率の維持と経済効果

「働く女性が増加している一方で、女性本人のヘルスリテラシーが追いついていない現状がある。企業は、女性従業員が少しでも体調に不安がある時、気軽に専門家に相談できる仕組みを用意することが重要だ」ーー日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部ワークスタイルイノベーション本部 本部長の小山善直氏は3月9日の記者会見でこう語った。

  • 日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部ワークスタイルイノベーション本部 本部長の小山善直氏

    日立ソリューションズ スマートライフソリューション事業部ワークスタイルイノベーション本部 本部長の小山善直氏

日立ソリューションズは葵鐘会との協創によってフェムテック分野に参入する。リシテア/女性活躍支援サービスでの相談内容は、相談者と相談を受けた専門家でのみ共有される。どんな話をしたのかなどの相談内容は、所属する企業へは伝わらない仕組みだ。誰が何回相談したかどうかは人事部が確認できる仕様になっているが、「匿名化して回数だけ把握するようにカスタマイズすることも可能」(小山氏)という。

また、産科・婦人科・不妊治療等の専門知識を有する看護師や助産師が対応し、心理的安全性を確保した環境で話すことができる。専門家への相談日は、スマートフォンからチャットで調整できる。

日立ソリューションズが2022年6月~9月に、女性従業員約70名を対象に実施した社内検証では、93%が「相談サービスが常時使えた方がよい」と回答しており、「家から相談できるため、保健センターや病院よりも気軽に利用できる」といった声が寄せられたという。

  • 社内試行のアンケート結果

    社内試行のアンケート結果

同サービスの提供価格は、利用人数や回数、条件などによって異なるが、「女性従業員100名が1年間で累計120回の相談をすると約年間300万円になる」(小山氏)とのことだ。

同社は今後、健康課題だけにとどまらず、キャリア形成や介護についても相談できるようサービスを拡張していく予定だ。また、導入企業が効果検証や新たな課題発見につなげられるようにするため「リシテア/就業管理」や「リシテア/従業員エンゲージメント」と連携し、同サービスの利用有無による女性従業員のパフォーマンスやエンゲージメントの変化の可視化なども検討していく。

小山氏は、「他社サービスとの違いは、就業管理サービスと連携することで、総合的にワンストップでフェムテックサービスを提供できる点だ。女性が働きやすい社会・職場づくりに貢献していきたい」と、意気込みを述べていた。