スマートキャンプは3月7日、優れたSaaS(Software as a Service)を表彰する「BOXIL SaaS AWARD 2023」を発表した。同日には受賞企業を表彰する受賞式が開催された。

同アワードは、同社が運営するSaaS比較サイト「BOXIL SaaS」に蓄積されたデータなどを基にした独自の算出基準により、優れたSaaSとその提供企業を選出するものだ。

  • 「BOXIL SaaS AWARD 2023」の受賞式の様子

    「BOXIL SaaS AWARD 2023」の受賞式の様子

今回はSaaS企業からエントリーされた導入事例を基に審査、選出を行う「導入事例セクション」のほか、同社提供のサービスやイベントなどのデータを基に定量評価する「BOXIL SaaSセクション」「BOXIL EXPOセクション」「BOXIL SaaS質問箱セクション」が設けられた。各セクションでは複数の部門が設けられ、各部門の1位が選出された。

導入事例セクションには約250事例の応募があり、スマートキャンプはその中から11サービスを選出した。なお、BOXIL SaaSセクション、BOXIL EXPOセクション、BOXIL SaaS質問箱セクションでは全77サービスを選出した。

  • 「導入事例セクション」で部門1位を受賞した企業とサービス

    「導入事例セクション」で部門1位を受賞した企業とサービス

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総合1位は、ノーコードWebアプリ開発プラットフォーム

全部門の1位の中で総合的に最も高い評価を得たサービスを1つ選出する「Best SaaS in Japan」には、グレープシティが提供する「Forguncy(フォーガンシー)」が選ばれた。なお、同サービスは導入事例セクションの「中小企業(SMB)部門」の1位にも選出されている。

  • スマートキャンプ 代表取締役社長CEO 林詩音氏(左)、グレープシティ Forguncy プロダクトマネージャー 大島治彦氏(右)

    スマートキャンプ 代表取締役社長CEO 林詩音氏(左)、グレープシティ Forguncy プロダクトマネージャー 大島治彦氏(右)

Forguncyは、外部のデータベースと連携可能なノーコードWebアプリ開発プラットフォームで、Excelとよく似たユーザーインタフェースでアプリケーションの画面レイアウトなどを行える。また、同サービスでは、データベース管理や帳票の作成といった業務システムの構築と運用に必要な機能も提供している。

同社はBOXIL SaaS AWARD 2023に、自動車、エネルギー、半導体などの業界に金属加工部品を提供するテック長沢における導入事例でエントリーした。

スマートキャンプは同事例において、スモールスタートで導入を開始し他部署への展開を成功した点や、2025年の崖の対策ツールとして推奨できる点を評価し同サービスを1位に選出した。

社員数170名の金属加工会社がSaaSを導入した理由

表彰式では、グレープシティ Forguncy プロダクトマネージャーの大島治彦氏とテック長沢 専務取締役の長澤博氏による対談が行われた。

同社でデジタル化の推進に携わる長澤氏は、「自社の要求に合わせて基幹システムのカスタマイズを続けることに限界を感じていた。また、製造現場の管理項目はExcelで作成した帳票に入力して、クラウドで管理していたが、それらの保守・メンテナンスが煩雑だった。また、蓄積したデータの活用もしたかったことから、開発ツールの豊富なForguncyを導入した」とサービス導入の経緯を明かした。

  • テック長沢 専務取締役 長澤博氏

    テック長沢 専務取締役 長澤博氏

現在、同社は休暇届けや従業員用の弁当発注システム、基幹システムからのデータ抽出、本社と製造現場とのやりとりなどのためのアプリケーション開発にForguncyを利用している。

デジタルツールに不慣れな人材に、ITシステムの利用を指示しても利用が浸透しないことは多い。そこで、テック長沢では、システムやデジタル利用に慣れてもらうために、タッチパネルで弁当の注文が可能なアプリケーションの開発・導入から始めたという。

また、事業部門における導入においては、1部門での試験導入のプロジェクトを立ち上げて、新しいシステムの導入が成功したうえで社内に横展開していった。

対談では、製造業におけるデジタル化のボトルネックにも話がおよんだ。

大島氏は、「製造業は業務が複雑でバリューチェーンも幅広く、基幹業務となる生産管理の周辺に存在する細かい業務があって、それらのデジタル化が進んでいないのが現状だと思う。そのため、データを上流から下流へ流したり、データをひもづけたりといったシステム化が難しいのではないか?」と述べた。

長澤氏は、「周辺業務は細かくあるものの、1つずつはそれほど時間がかからない。けれど、すべてをシステムに盛り込んでいこうとすると莫大な費用がかかってしまう。また、仕事の流れも変わる中で、それにシステムを追い付かせるのが大変で、デジタル化で取り組まなければいけないことが多い」と答えた。

  • グレープシティ 大島氏とテック長沢 長澤氏による対談の様子

    グレープシティ 大島氏とテック長沢 長澤氏による対談の様子

SaaSに限らず、さまざまなサービスの新規導入では、費用対効果が導入の指標となる。しかし、テック長沢では費用対効果だけでなく直感も大事にしているという。

「当社の企業規模(社員数:170人)で、費用対効果を1つずつ精査していくと手間がかかるうえ、見えている部分だけでは導入効果が図りにくいと考える。実際導入してみると、当初想定していた領域以外でも導入効果を得られることは多いので、経営陣による会議で『これは絶対導入したほうがいいだろう』と結論が出たら導入している」と長澤氏は説明した。