大阪公立大学(大阪公大)は3月3日、ウサギ半月板損傷モデルを用いて半月板の治療法について検証した結果、個体由来の骨髄液から作成した血餅(血液が凝固したもの)である「骨髄液フィブリンクロット」を使用した半月板縫合術が、末梢血フィブリンクロットを使用した縫合術や無処置の場合と比較して、修復が良好であることを明らかにしたと発表した。
同成果は、大阪市立大学院 医学研究科 整形外科学の木下拓也大学院生、同・橋本祐介講師、同・中村博亮教授らの研究チームによるもの。詳細は、低侵襲手術に関する全般を扱う学術誌「Arthroscopy」に掲載された。
よく耳にする膝関節に関わるケガの1つに、半月板損傷がある。半月板は膝関節において、脛骨側上部にある軟骨組織で、主に膝関節の荷重を分散・吸収し、同関節を保護する役割を持つ。また軟骨組織の例に漏れず、損傷すると治癒しにくい上に、安易に切除すると変形性膝関節症へと進行してしまうという扱いの難しさが特徴だ。さらに、半月板の中でも治癒しにくい部位である無血行野の修復手術には未解決の課題が残り、骨に穴を開けて骨髄液を関節内に供給するなど、さまざまな試みがされている。
そのような背景の下、骨髄液フィブリンクロットが組織修復を促す効果に注目し、これまでの研究に対して臨床応用することで比較的良好な治療成績を報告してきたのが研究チームだ。
そこで今回の研究では、ウサギ半月板損傷モデルを作製し、その上で無処置のコントロール群、末梢血フィブリンクロットを移植した群、そして骨髄液フィブリンクロットを移植した群に分け、組織学的評価および力学的評価を実施し、比較検討を行ったという。
組織学的評価では、半月板スコアリングシステムに従って、術後4週、12週の半月板の状態の評価が行われた。すると、末梢血フィブリンクロット使用群と髄液フィブリンクロット使用群において、良好な修復が得られたという。
また、術後12週での半月板修復部に圧を加え、その強度を測る力学的評価を実施したところ、骨髄液フィブリンクロット使用群が、コントロール群および末梢血フィブリンクロット使用群よりも有意に強度が高い結果となったとする。
研究チームによると、骨髄液フィブリンクロットの作製は、追加の侵襲が少ない上に比較的煩雑さが少ないため、すぐに臨床応用が可能なことが優れた点だという。今回の研究が進展することで、患者自身の骨髄液フィブリンクロットを使用した半月板修復術が普及し、半月板を温存できる症例が増えることが期待されるとしている。