米国商務省がCHIPS法に基づき半導体企業からの補助金申請を開始したことを受けて米国半導体工業会(SIA)が、それを歓迎する声明を発表した。
SIAのプレジデント兼CEOであるJohn Neuffer氏は声明の中で、「半導体企業は、米国にてCHIPS法の助成金を見越した数十の新しいプロジェクトを発表している。これらのプロジェクトは、合計で数千億ドルの民間投資となり、数十万人の雇用を支援している。CHIPS法の補助金は、半導体研究への多額の投資(助成金)とともに、米国経済を活性化し、米国の国家安全保障と重要なサプライチェーンを強化するのに役立つ。新しい法律が効果的、効率的、かつ迅速に施行されるよう、商務長官や商務省のCHIPS事務局と協力する準備ができている」と歩調を合わせることを述べているが、その一方で、「私たちは、企業がCHIPS法の補助金申請のために定められた通知内容を慎重にレビューしているところでもある」とも述べている。
SIAは、会員企業が恩恵を受けるCHIPS法を歓迎する一方、商務省が2022年10月に対中半導体輸出規制を強化することを発表した際は、「SIAは、国家安全保障を確保するという商務省の目標を理解しているが、米国政府に対し競争の場を公平にし、米国のイノベーションに対する意図しない損害を軽減するよう促す」との声明を発表し、米国半導体の輸出を促進するため、あくまでも貿易の自由化を主張している。
自由貿易を標榜する国際半導体会合が中国で開催、SIAも出席
自由貿易を標榜する世界半導体会議(WSC)の合同運営委員会(JSTC)が、3月7日から10日の予定で中国 厦門にて開催される。世界の主要な地域・国の半導体工業会の代表団が出席予定で、米国からはSIA、日本からはJEITA半導体部会の関係者が参加する。貿易の自由化、グローバルサプライチェーン、政府支援イニシアチブ、環境問題、およびその他の最近の政治経済問題について話し合うことになっている。
地政学的な緊張が高まり、輸出規制が強化されている中で、JSTCは半導体デカップリングに向かう政治的傾向を逆転させ、市場を解放し、世界で協力してグローバルサプライチェーンを構築することを目指すという困難な任務を負っている。
今回の会議は、2023年5月に韓国ソウルで開催予定の半導体企業CEOレベルのWSC会議の準備段階の位置づけとして開催され、CEO会議では、2023年10月に米アリゾナ州フェニックスで開催される年次半導体政府当局会議(GAMS)で提示される各国政府向けの詳細な政策提言の準備が行われる予定となっている。
WSCは、自由で開かれた市場を通じて半導体産業の成長を促進することを使命としており、GAMSは、業界と政府間の相互理解の向上と、半導体業界が直面する課題に対する協力的な取り組みを通じて、世界の半導体市場の成長を促進する役割を負っている。
輸出依存の米国半導体産業、SIAも自由貿易を推進
SIAのグローバルポリシー担当VPであるJimmy Goodrich氏らは、JSTCへの出席に先立つ3月2日、「世界中の半導体工業会が集う会合で、グローバルな半導体業界の協力の重要性が強調される」と題するブログを発表した。その中で「今回は、SIAにとって新型コロナ発生後初の中国訪問である」とし、自由貿易に向けて米国にとって最大の半導体輸出国である中国側との意思疎通に期待を表明するほか、「世界的な貿易摩擦が高まる中、開かれた市場、安全で弾力性のあるグローバルサプライチェーンをサポートする政府の政策が緊急に必要とされているが、我々はJSTC会合でこの課題について話し合うことを楽しみにしている」と述べている。
さらに、米国半導体産業界の現状について「米国のみで完全な半導体の自給自足はできない。これは、グローバル市場とサプライチェーンへのアクセスが、米国の半導体産業の将来の成功に不可欠であることを意味している。実際、米国の全半導体の80%以上が海外で販売されている。つまり、CHIPS法の支援を受けて新しいファブと雇用が創出されるが、国際競争力の維持のために、グローバル市場へのアクセスを拡大する必要がある。SIAとそのメンバーは、米国サプライチェーンを再構築すると同時に、グローバル市場へのアクセスをさらに促進し、すべての主要なパートナーや各国とのより深い国際協力を通じてグローバル貿易の増加を促進することに取り組んでいく」と述べている。
米国の対中半導体規制がエスカレートする中、米中の半導体工業会代表者が数年ぶりにリアルで会って世界の貿易自由化やグローバルサプライチェーン構築に関して、日本を含む各国・地域の主要半導体工業会代表者とどのような話し合いをするのか、世界中の半導体産業関係者が注目している。