ソフトバンクと東京海洋大学の後藤 慎平助教らの研究チームは3月3日、画像処理によるトラッキング技術を活用した可視光の無線通信技術によって、水中の狭隘空間を移動する水中ロボットをリアルタイムで遠隔制御する実証実験に成功したことを発表した。
ソフトバンクと東京海洋大学は、遠隔地に展開する無人ロボットに対してThuraya Telecommunications Company(以下、Thuraya)の通信衛星を利用した無線通信を経由して制御命令を送信し、OCC(Optical Camera Communication)の信号に変換して他の無人ロボットなどの制御や観測データの取得を実現する遠隔制御技術を開発した。
今回、水中ロボットや水中のIoT機器などを遠隔制御するため、地上の通信ネットワークではカバーできない外洋や極域などの海域までカバレッジを拡張するNTN(Non-Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)としてThurayaの通信衛星を利用した無線通信を活用し、実験場所である厚岸湖(北海道厚岸町)とソフトバンクの本社(東京都港区)の間を接続して、水中ロボットをリアルタイムで遠隔制御する実証実験を行った。
その結果、OCCによる可視光の無線通信技術によって、厚岸湖の水中の狭隘空間を移動する水中ロボットをリアルタイムで遠隔制御できたほか、約930km離れた遠隔地からThurayaの通信衛星を利用した無線通信を経由して、自在に制御する実験にも成功した。
この結果から、アクセスが困難な地域や海域においても水中ロボットや機器のリアルタイムでの遠隔操作が可能になるとともに、データの収集や観測、機器の監視や保守のための現地調査の低減などの効果が期待できる。
また、OCCを活用することで、従来の音響通信による測位が困難な極浅海域でも、安定的かつリアルタイムにロボットとの通信が可能であることから、海氷または湖氷の下などにおける漁業や調査での活用も見込まれるという。
さらに、水中は海象・気象の影響を受けにくいことから、OCCなどの水中光無線通信技術による水中灯台などのインフラを構築することで、洋上物流に代わる次世代の物流にも活用できると期待されるということだ。
今後、さらに実用的かつ確実な技術にするため、南極海などでの実証実験を通して、まずは極地や島しょ地域などでの実用化を目指すとしている。