東京都立産業技術研究センター(都産技研)は3月1日、これまで確認が難しかった「尿のにおい(尿臭)」の消臭効果の評価を目的に、尿臭を再現した試薬「模擬尿臭」と、その消臭効果を評価する方法の開発に成功したことを発表した。
また、同技術を元にプロテックが有する糸・生地・製品などに含ませることで洗濯しても抗菌機能を持続させる「ナノ粒子酸化亜鉛抗菌加工剤」の1つ「ナノファイン100」に尿臭の消臭効果があることも確認。男性向け下着に採用されたことも併せて発表された。
アンモニアは、SEK(維評価技術協議会)の消臭性試験規格にも含まれる臭気ながら、都産技研の研究者は、リアルに感じる尿臭はアンモニアとは異なると予測。実際に人間から採取した尿臭では個人ごとの違いや体調によるバラつきなどに加え、衛生面の課題もあったことから、実験には尿臭を模擬した臭気(模擬臭)を試薬から作成することに挑戦。しかし、尿臭は1つの成分のにおいではなく、さまざまな成分が混合してできた複合臭であるため、成分の選定と混合割合が難しかったという。
最終的にはちみつのにおいとも言われるフェニル酢酸をはじめとする尿臭成分を選定し、実際の尿臭に近いと評価された模擬臭の作成に成功したというが、人間の嗅覚の方が、分析装置よりも上であるため、消臭性試験方法の検証も難しかったという。具体的には、模擬臭の主成分はフェニル酢酸であったが、人間の鼻ではにおいを感じることができるものの、分析装置では成分の検出が難しく、臭気成分の濃度を高めることを目的に、湿度やpHのコントロールを行うことで、ようやく分析装置での成分を安定的に検出することができるようになったという。
また、実際に尿臭を消臭できる製品開発も目指し、プロテックの複数のナノファインを調査した結果、そのうちの1つ「ナノファイン100」に尿臭成分の減少効果があることを確認。実施に、性能評価の最終段階として30~50代男性を対象とした着用試験を実施し、着用品からフェニル酢酸を検出したほか、ナノファイン100で加工した製品ではそのフェニル酢酸の減少を確認したという。
なお、ナノファイン100を用いた男性向け下着は2023年2月24日より発売が開始されており、都産技研では、今回の共同研究で用いたナノファインについて、将来的には女性用製品や、介護用のシーツへの展開などへの期待もできるとしている。