名古屋大学(名大)は2月28日、国際深海科学掘削計画(IODP)に提案していた、東京から約2000km南のフィリピン海プレート上の深海底にある地球上最大のメガムリオン「ゴジラメガムリオン」の掘削提案書が、今回、IODPの科学評価委員会において学術的価値が高く評価され、掘削船運用委員会に提出されることになったと発表。これにより、将来的な同メガムリオンの科学掘削の実現に向けて一歩前進したとしている。
同成果は、名大大学院 環境学研究科の道林克禎教授、同・小原泰彦客員教授を中心とした、産業技術総合研究所、海洋研究開発機構などの共同研究チームによるもの。今回の掘削提案書は、「IODP Proposal」に掲載された。
メガムリオンとは、海底拡大に伴う大規模な正断層によって、海底面にマントル物質などが露出したドーム状の地形の高まりのことで、その表面に畝(うね)状の構造を持つことを特徴とする。ゴジラメガムリオン地形区は、東京から約2000km南方のフィリピン海プレート上にあり、2001年に行われた日本政府による大陸棚画定調査の際、沖ノ鳥島南東方で発見された。その大きさは、ほかのメガムリオンのおよそ10倍で、東京都の面積と比較してもおよそ3倍と、現在発見されているメガムリオンの中では、地球上最大のものだとする。その巨大さから怪獣「ゴジラ」の名が引用され、命名された。
ゴジラメガムリオンは、同地形区内の特徴的な海底地形を対象に、同地形区をゴジラの身体に見立て、腕(アーム)、脚(レグ)、尾(テール)など、身体各部位の名称が与えられている。これらの名称は決して日本独自のものではなく、世界の海底地形名を標準化するための海底地形名小委員会において、ゴジラメガムリオン地形区として承認済みだという。
同地形区は、海洋科学において非常に重要な研究対象である。研究チームはこれまで、フィリピン海プレートの組成・構造に関する重要な研究成果を得ており、そうした成果を踏まえ、研究チームは2018年に同メガムリオンを掘削する科学提案書をIODPに提出。その後、IODP科学評価委員会による審査が継続していた。そして2023年1月に開催された科学評価委員会において、同提案の学術的価値が認められ、高い評価で受理されて掘削船運用委員会へと提出されることとなったという。
今回のゴジラメガムリオンの掘削提案では、バックボーン海膨において720mまで、北テール海膨において250mまで掘削し、フィリピン海プレートの深部物質の回収を目指すとしている。研究チームは、これによりフィリピン海プレートの形成過程の理解が進むことが期待されるとしている。