TSMCが2022年末に3nmプロセス(N3)の量産を開始したが、この初期生産枠はAppleがすべて確保した模様だと台湾の複数メディアが報じている。
Appleでは、3nmプロセスを用いて、次世代iPhone向けSoC(A17 Bionicと見られる)や次世代MacBook向けSoC(M3仮)の製造を行うものと見られているが、TSMCでは従来通り、顧客情報については回答しないという態度を示している。
2024年にはApple以外も3nmプロセスを採用へ
初期のN3はAppleが当面の間、ほぼ占有する状態となるが、N3の改良版でコスト低減と生産性向上を図った拡張版「N3E」も開発されており、こちらが次期主流プロセスと期待されている。そのため、N3とN3EではN3Eの方が生産枠が多くなると見られており、N3Eの量産が本格化するとみられる2024年以降、QualcommやMediaTekはN3Eでの製造を推進する見通しだという。
また、AMDのZen5 CPUやRDNA4 GPUについても2024年以降のN3Eでの生産枠で製造されるものとみられているほか、NVIDIAについても2024年ごろの投入が計画されているAda Lovelaceアーキテクチャの後継となるBlackwellアーキテクチャを採用した「GeForce RTX 5000シリーズ」もN3Eあたりを採用して生産枠の確保を行うものと見られている。
稼働率が低下した4~7nmプロセスは第2四半期以降、回復か?
台湾の半導体サプライチェーン関係者からの情報では、TSMCの7/6/5/4nmプロセスについて、一時的に稼働率が低下しているものの、NVIDIAやAMDなどといった米国顧客がAIやデータセンター向けチップの追加注文が出てきており、2023年第2四半期には稼働率が上向くとの見方がでているという。
例えばNVIDIAは、TSMCの7nmプロセスで製造するGPU「A100」や、4nm採用GPU「H100」などのデータセンター向けAI製品の供給でOracleと長期契約を結んだほか、Microsoftからも「Microsoft Azure」向けにH100を大量受注しているという。また、中国市場専用AI GPU「A800」シリーズについても、Baidu(百度)などの中国顧客からの大量発注が生じているという。
さらに、注目を集める生成AI「ChatGPT」を手掛けるOpenAIもNVIDIAのGPUの大量購入を進めているほか、GoogleもNVIDIAのAI GPUへの発注規模を拡大している模様である。
AMDもChatGPT旋風を受けて、多くの顧客がAMD製CPUとGPUの調達を緊急に拡大しているとされており、TSMCの先端プロセスラインの稼働率向上に貢献しているという。