宇宙航空研究開発機構(JAXA)は28日、新たな宇宙飛行士候補に、世界銀行上級防災専門官の諏訪理(まこと)さん(46)と、日本赤十字社医療センター外科医の米田(よねだ)あゆさん(28)の2人を選出したと発表した。JAXAの飛行士候補選出は2009年以来14年ぶりで、月面の活動を視野に、国際月探査などで将来にわたり宇宙開発を支える人材となる。

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    会見で、報道陣の求めに応じて握手のポーズを取る米田さん(左)と諏訪さん=28日、東京都千代田区

諏訪さんは1977年、東京都生まれ。茨城県つくば市育ち。2007年、米プリンストン大学大学院地球科学研究科修了。青年海外協力隊のルワンダ派遣、世界気象機関(WMO)を経て、2014年に世界銀行に入行した。アフリカの気候変動や防災に関する取り組みに従事している。

米田さんは1995年、東京都生まれ。京都市育ち。2019年、東京大学医学部卒業。同大医学部付属病院を経て21年に日赤医療センター(東京都渋谷区)に入職し、昨年10月から虎の門病院(港区)に派遣されている。

都内で会見した米田さんは「選んでいただいたことへの責任感と使命に身が引き締まる。気さくに、身近に思ってもらえる飛行士に」と意気込みを示した。小さい頃、先輩飛行士の向井千秋さん(70)の伝記を読んだことが宇宙を志すきっかけになったという。

米国からオンラインで臨んだ諏訪さんは「驚き、大きな責任を負うことになったと感じた。宇宙開発の成果は日本はもとより、世界のいろいろな国でもっと感じるようになっていくべきだ」と語った。2008年の前回も応募したものの1次選抜で不合格となったといい、再挑戦が実った形だ。

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    (左)都内で会見する米田さん、(右)オンラインで会見する諏訪さん=いずれも28日

2人は飛行士候補者として、4月にJAXAに入社する。基礎訓練を経て飛行士に認定後、国際宇宙ステーション(ISS)、米国が2020年代に国際協力で月上空に建設する基地「ゲートウェー」や月面で活動することが見込まれる。

2021年11月に募集を開始して選抜を進め、応募総数4127人(男性3204人、女性919人、他4人)から2人が決まった。自然科学系の大学卒業以上とした前回の応募資格を撤廃し、世界で初めて学歴や専門分野を不問にしたが、結果的に自然科学系出身者から選ばれた。2010年に15日間の初飛行をした山崎直子さん(52)が翌年にJAXAを退職し、現役の女性飛行士の不在が続いていた。

米国はゲートウェーを建設し、2025年以降にアポロ計画以来となる月面着陸を目指す「アルテミス計画」を進めている。日本も19年に参画を決定。20年に文部科学省と米航空宇宙局(NASA)が、日本人の着陸機会に言及した共同宣言を発表。同年末には、日本人のゲートウェー滞在などを盛り込んだ日米間の覚書が発効。昨年11月には、ISSの2030年までの運用に日本が参加することなどで、文科省とNASAが合意している。

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    アルテミス計画で月面で活動する飛行士の想像図(NASA提供)

JAXAの飛行士募集は6回目で、前回は963人の応募者から航空自衛隊パイロットだった油井亀美也さん(53)、全日空パイロットだった大西卓哉さん(47)、海上自衛隊医官だった金井宣茂さん(46)が選ばれた。JAXAの現役飛行士は46~59歳の6人がいる。

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