名古屋大学(名大)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、室蘭工業大学(室蘭工大)の3者は2月27日、この3者に慶應義塾大学(慶大)を加えた4者の共同で2021年7月27日に成功させた、観測ロケットS-520-31号機の第2段を用いた「回転デトネーションエンジン」(RDE)の宇宙飛行実証の飛行データの解析を実施し、メタン-酸素の推進剤が182±11g/sで供給され、RDEの推力は518N、比推力は290±18sec、回転トルクは0.26N・mであったこと、また、圧力履歴などからエンジン作動は安定であったことを確認したと発表した。
同成果は、名大 未来材料・システム研究所の笠原次郎教授を中心に、JAXA、室蘭工大、慶大の研究者らが参加した共同研究チームによるもの。詳細は、米国航空宇宙学会(AIAA)の「SciTech 2022」で口頭発表された1本と、宇宙船とミサイルを含むロケットに関する技術全般を扱う学術誌「Journal of Spacecraft and Rocket」の2本の、合計3本の論文にまとめられた。
デトネーションとは、衝撃波に伴って、化学反応による熱開放が行われる燃焼現象のこと。その伝播速度は、2km/sにもなるため、可燃性のガスを高速で燃焼させることが可能だ。この現象を利用したデトネーションエンジンは、極めて高い周波数(1~100kHz)でデトネーション波や圧縮波を発生させることにより、反応速度を格段に高めることでロケットエンジンを革新的に軽量化し、また推力を容易に生成することで高性能化させるというものである。
そしてRDEとは、デトネーションを連続的に伝播させることで連続的な推力を得るエンジンのことをいう。推進剤は軸方向に噴射され、その反対方向に推力を得ることが可能だ。
2021年の同研究チームによる宇宙飛行実証実験の成功によって、デトネーションエンジンは、深宇宙探査用キックモーター、ロケットの初段・第2段エンジンなどとしての実用化に大きく近づくことになったとする。また欧米でも研究が活発化しており、研究チームは、すでに今回の研究に続く宇宙飛行実験計画が多数発表されているとした。