京都府立医科大学と京都大学(京大)の両者は2月24日、野生型マウスを4群に分け、それぞれ普通食、普通食+ポリスチレンマイクロプラスチック(MP)、高脂肪食、高脂肪食+MPを餌として4週間与えたところ、高脂肪食を摂取したマウスにおいて、糖尿病や脂質異常症、脂肪肝がMPによりさらに悪化することが確認されたと共同で発表した。

  • 今回の研究内容の概要

    今回の研究内容の概要(出所:共同プレスリリースPDF)

同成果は、京都府立医科大大学院 医学研究科 内分泌・代謝内科学の岡村拓郎病院助教、同・濱口真英講師、同・福井道明教授、京大 地球環境学堂の高野裕久教授、同・大学院医学研究科 消化器内科学の中西祐貴助教、同・妹尾浩教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米・国立環境衛生科学研究所の支援により刊行されている環境衛生に関する全般を扱う学術誌「Environmental Health Perspectives」に掲載された。

MPは、直径5mm以下の小さなプラスチック粒子のことをいう。プラスチックは自然に分解しにくい物質であり、細かくはなっていっても、MPとして環境中に長く残留し続けるため、環境汚染を引き起こしている。特に近年は、海洋汚染が世界的に深刻な問題となっており、MPを摂取した魚をヒトが食することもあると同時に、さらにペットボトル水などといったヒトが直接口にするようなMPも増加しており、健康への影響が危惧されている。

それに加え、日本においては食事の欧米化が進んでおり、脂肪摂取量が増加していることも健康面における課題となっている。脂肪摂取量が増えることは肥満につながることは当然だが、腸内細菌叢の乱れにもつながる。その結果、腸のバリア機能の低下を呼び、本来は体内に取り込まれないはずの細菌や有毒物質を取り込んでしまうことでさまざまな症状を引き起こす「リーキーガット症候群」を発症することも知られていた。

そこで研究チームは今回、野生型マウスに普通食+ポリスチレンMP(水に混ぜて給水、濃度1000μg/L)、高脂肪食、高脂肪食+ポリスチレンMPの4群に分けて4週間投与し、種々の代謝障害の項目を評価することにしたという。

実験の結果、高脂肪食+MPが投与されたマウスでは、高脂肪食単独投与マウスと比較して、血糖値・血清脂質濃度・非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)活動性スコアが高値であることが確認された。また普通食投与マウスに比べて、高脂肪食投与マウスの小腸の透過性は高くなり、杯細胞数は低くなっていたとする、

一方で、小腸粘膜固有層の炎症細胞数は普通食マウスと普通食+MPを投与したマウスでは明らかな差は確認されなかった。しかし、高脂肪食+MPが投与されたマウスでは、高脂肪食のみが投与されたマウスと比べて炎症細胞が多く、抗炎症細胞が少数だったという。

さらに、高脂肪食+MPが投与されたマウスの腸内では、Desulfovibrio属の最近が高脂肪食単独投与マウスに比べ有意に多く存在することも確認された。マウス腸管上皮細胞株MODE-K細胞にパルミチン酸およびMPを添加するとMuc2遺伝子発現が低下し、IL-22を添加するとMuc2遺伝子発現が上昇したとする。

今回の研究から、MPは高脂肪食が投与されたマウスにのみ糖尿病やNAFLDなどの代謝異常をさらに悪化させることが示された。このことは、リーキーガット症候群が高脂肪食によって引き起こされ、MPが腸粘膜に沈着した結果、腸粘膜固有層に炎症が起こり、それによって栄養吸収が変化した可能性が示唆されるという。今回の結果は、高脂肪食条件下での代謝障害を改善するために、医学的対策だけでなく環境改善策によってMPの経口曝露量を減らす必要性を強調するものとしている。