時として、たった一人の人間が企業の競争力を高める革新的な新しいアプローチを考え出すことがあります。しかし多くの場合、さまざまなチームの協力と、異なる多くのデータソースの組み合わせが必要です。
多くのエグゼクティブは、ビジネスライン全体でデータ主導型のオペレーションを行うことが、勝ち抜くための戦略の鍵であることに賛同しています。その点は、Gartner 2022 CEO and Senior Business Executive Surveyでも、デジタル機能への85%の投資増加とITへの77%の投資増加という結果が報告されています。
技術部門だけでなく、すべての従業員がデータにアクセスし、その意味を理解できるようにすることが、企業の成功にとって非常に重要です。しかし、これの実現には多くの困難を要します。
New Vantage Partnersの「Data and AI Leadership Executive Survey 2022」によると、これを実現できている組織はわずか27%で、さらに19%がデータ文化の確立に苦慮しています。
Gartnerの「State of Data and Analytics Governance」では、2025年までに、デジタルビジネスの拡大を目指す組織の80%が、データと分析のガバナンスに最新のアプローチを取らないために失敗すると報告しています。
残念ながら、技術スタックをモダナイズしクラウドに移行するだけでは、ビジネス全体にわたってすべての人が正しいデータを正しく扱えるようになるわけではありません。企業は、ガバナンスの実践をモダナイズする必要があります。
では、ビジネスリーダーは、宝の山であるデータの鍵を組織の従業員に渡す前に、何を考えるべきでしょうか。以下は私が考えるトップ6です。
エンドツーエンドの視点を持つこと
データガバナンスを成功させるには、データウェアハウスから分析ソリューションに至るまで、データランドスケープ全体を網羅し、エンドツーエンドで実施する必要があります。
データガバナンスは、あらゆるプロセスと同じように、すべてのプロセスを管理しなければ、最終的な結果を管理することはできません。
データガバナンスとは、ビジネス上の意思決定の根拠となるKPIが正しく、信頼できるものであると保証することであり、リアルタイムな意思決定に利用可能な、信頼できる安全なデータをエンドユーザーに提供するためのプロセスを確立することです。
合成データのパワーを検討する
人工的に作成されたデータは、現実の世界に関連するプライバシー、著作権、倫理的なハードルを飛び越えながら、これまでになかったような革新的なモデリングを可能にします。ヘルスケアや金融サービスなど、規制の厳しい業界では大きな可能性を秘めています。
また、合成データの有効性に疑問を持つ人のために、合成データを使って訓練したモデルは、他のモデルよりも精度が高いことが研究で示されています。
このような理由から、合成データの人気が高まっており、2030年にはAIモデルにおいて実データを完全に追い越すとされています。
データ配信の自動化
現在では、手動によるデータ配信から自動化への移行を支援するソリューションが提供されています。
このアプローチにより、さまざまな方法で管理が強化されます。自動化されたソリューションでは、ルールやポリシーによって、プロセスにガバナンスを組み込むことができます。
また、ワークフローに基づいて、オーダーメイドでデータ品質を改善することもできます。さらに、パイプラインに沿ったデータ特性の識別を自動化すると、ユーザーが見てはいけないものを見ることを防ぐことができます。
ケースベースのアプローチでカタログを作成する
データや分析へのアクセスを増やすと、より多くのユーザーを管理し保護することが複雑になり、リスクが高まります。しかし、データへのアクセスを民主化することは、どのような組織にとっても、その真のメリットを享受するために不可欠です。
そのため、データと分析のカタログを確立することが、リスクの軽減につながるのです。データに関しては、組織内の誰もがどのデータが安全に利用できるかを1つのシンプルなビューで確認でき、ITチームはユーザーの種類とアクセス権に関するデータを識別してマスキングすることで、カタログが安全であることを知ることができます。
分析の観点からは、ビジネス用語集と再利用可能な資産という概念に加え、データの系統と影響分析によってデータにさらなるコンテキストを提供し、より一貫性のある理解、より迅速で実用的な洞察を促進することができます。
データリネージによる完全な可視化
ユーザーが増えるということは、それだけエラーのリスクも増えるということです。データリネージは、ソースから現在の場所までのデータフローを理解し、可視化する能力を提供します。
データプロセスの異常を発見、追跡、修正する能力により、企業はデータガバナンスの目標を達成し、規制遵守のコストを削減し、組織全体のデータに対する信頼と信用を高め、データ分析を改善し、それによってビジネスパフォーマンスを向上させることができます。
ステップバイステップで進める
多くの大規模でリスクの高いデジタル変革プロジェクトと同じく、データガバナンスに対して「大きく考え、小さく始め、速く拡張する」アプローチを取ることは賢明です。
特にセルフサービス分析を使用している場合は、アウトサイドインの視点を持ち続けることも有効です。これは、データガバナンスを始めるにあたって、データランドスケープ全体を概観し、どの不整合、目的、エラーが最も重要であるかを特定し、そこから取り組みを構築することを意味しています。
あらゆるビジネスがデータの民主化から恩恵を受けることは間違いなく、データと分析への投資意欲は高まり続けており、93%の企業がこれらの分野への予算を引き続き増やす予定であると回答しています。
しかし、プライバシーをめぐる規則や規制の急速な変化、データの分布、多様性、ダイナミクスによって、データの民主化は困難なプロセスになっています。
ここに挙げた6つの観点、エンドツーエンドの視点、ステップバイステップのアプローチ、合成データのパワーの検討、自動データ配信やケースベースのカタログ化への投資に着手することにより、リスクを恐れる組織であっても、データの権限を従業員1人ひとりの手に渡さない理由はありません。