ネットプロテクションズは2月21日、現金の集金業務に携わる現場担当者、請求業務に携わる経営者、営業を対象に実施した調査結果によって明らかになったDX(デジタルトランスフォーメーション)の実態に関する説明会を開催した。同社は、「経営層と現場担当者のDXに対する意識調査」「決済業務における現場担当者の働き方実態調査」という2つの調査を実施した。
説明会にはネットプロテクションズの広報である村山智美氏が登壇し、経営層と普段顧客対応をする現場担当者のそれぞれを対象とした「DXの浸透具合」や「職位によって異なるDXに対する見方」を紹介した。
本稿では、説明会内で紹介された調査データをもとにDXの現状をひも解いていく。
日本はアメリカと比較して「守りのIT投資」
まず村山氏は、外部調査の結果から国内企業における「DX推進」の概況を説明した。
「中小企業基盤整備機構の調査によると、46.8%の人がDXを『理解していない』または『あまり理解していない』と回答しています。また、この結果を従業員規模で見てみると、従業員規模が大きいほど理解している人が多く、従業員規模が小さいほど理解している割合が少ないことが分かっています」(村山氏)
またIDC Japanが調査した「IT投資に関する日本・米国の比較」では、日本のIT予算の活用状況は業務効率化やコスト削減を主目的とした「守りのIT投資」になってしまっている。そのため、ITによる製品/サービス開発の強化などに多くの予算を投入している米国の「攻めのIT投資」に比べて、DXの本来の意味である「企業の成長、競争力強化のためのデジタル活用」に対する意識が低いことが判明したという。
「日本では『業務効率化』のためにDXを行っているという企業も少なくなく、製品/サービス開発の強化などに予算を充てている企業は多くありません。特に従業員規模の小さい企業では、そもそもDXの意味を知っている人の割合も少なく、まだまだ浸透しているとは言えません。そこで、当社は本来の意味である『企業の成長、競争力強化のためのデジタル活用』において、何がボトルネックとなっているのかを調査するに至りました」(村山氏)
具体的には、営業職と経営者に対して「請求業務やDXについての意識調査」を、また、集金を担当する現場作業員に対して「現金の集金業務やDXについての意識調査」を行い、役職や担当業務が異なる各社員の「DX」に対する意識の違いを明らかにした。
社内のDX意識格差が生じる原因は「現場の実態把握の遅れ」
経営層と現場(営業職)に対してDXの取り組みの進捗状況を聞いたところ、役職を問わず、DXが「進んでいない」「あまり進んでいない」との回答が8割を超えるという結果になったという。
また、自社でDXが必要とされる部門・部署はあるかを聞いた質問では、営業職社員は自分が所属する部署にDXを求めている一方、経営層は、会社全体を俯瞰しフロントのみならずバックオフィスにもDXの必要性を見出しているという差異が現れた。
さらに、経営者の50%以上は「DXが必要な部署は特になし」と回答しているのに対して、営業職社員は「DXが必要な部署は特になし」の回答者が20%強にとどまっているという点でも違いが現れた。
「DXによって期待される効果として当てはまるものを全て選択して下さい」と聞いた質問では、DXの効果について、単なる「コスト削減」に過ぎないと認識している人が多く、「価値創造」につながる取り組みであるという認識をしている人は少ないということが分かった。
先述したように、やはり日本は守りのIT投資になってしまっている企業が多く、本来のDXの意味であるトランスフォーメーションまで至っていないことが分かる結果である。
「今回の調査を通して、各役職で、社内のDXに対する意識差分があることが明らかになりました。特に、請求業務に携わる営業職と経営者とではそのギャップは大きいようです。これらの結果から、社内のDX意識格差が生じる一因は、現場の実態に対する把握・理解が遅れていることにあるのではないかと考えています」(村山氏)