岩谷技研は2月21日、誰もが宇宙を体験できる「宇宙の民主化」を実現する共創プロジェクト「OPEN UNIVAERSE PROJECT」を始動することを発表した。

同プロジェクトは、岩谷技研が手掛ける気球による宇宙遊覧を軸に、旅行会社などのパートナーとともに、日本からの宇宙産業を開拓しようというもの。今回、プロジェクト始動に併せて、宇宙遊覧体験の搭乗者のほか、パイロットならびに共創企業の募集が開始された。また、JTBが、同社の考えに共感し、共創パートナーとして協賛を決めたことも明らかにされた。

岩谷技研では、気球による宇宙遊覧の商用化を2023年度内に開始する予定。現在、41m級の気球と2人乗り(パイロット1名+乗客1名)のキャビン「T-10 Earther」による実証実験を進めており、2023年中にそれを終えた後、商用サービスを開始する予定としている。

  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」と岩谷技研の岩谷圭介 代表取締役社長(左)、JTBの花坂隆之 代表取締役 専務執行役員(右)

    2人乗りキャビン「T-10 Earther」と岩谷技研の岩谷圭介 代表取締役社長(左)、JTBの花坂隆之 代表取締役 専務執行役員(右)

2023年度の募集搭乗人員は5名としており、2月21日より、搭乗者の募集が開始された(応募は専用サイトより実施)。募集期間は2023年2月21日10時~2023年8月31日16時59分とされており、抽選制。当選者発表は2023年10月9日ごろに行うことが予定されている(当選者5名については、2023年11月20日~12月3日のいずれかの日程で合同オリエンテーションが実施される予定)。

  • 2023年度の搭乗募集は2023年8月31日の16時59分までとなっている

    2023年度の搭乗募集は2023年8月31日の16時59分までとなっている

打ち上げ場所は北海道の十勝地方が予定されており、2023年12月以降、順次打ち上げを行う予定としているが、天候次第のところもあるため、あらかじめ1週間の予備日が予定されるという。

このサービスを提供するにあたって岩谷社長は、「宇宙旅行を誰にでも届けることができるのが気球。訓練不要、高い安全性、家族で行ける唯一の手法、これまでの1000分の1程度の金額、といった4つの特徴がある。気球の安全性は自動車や飛行機などと同程度で、金額としても将来的な価格だが、地球一周を客船に乗って行くのと同程度くらいまで下げられるのではないか」と、その特長を説明する。

一方の併せて行われるパイロット募集については、パイロット候補生として若干名の募集を行うとしている。候補生は同社の正社員として、パイロットの訓練を受けながら、開発を主体としたその他の業務にも従事する予定だとしており、岩谷社長は、「事業の拡大にはパイロットのほかにも整備士なども必要になってくる。そうした新しい宇宙に携わる仕事を作るという試みも進めていく」と、宇宙産業のすそ野拡大にも挑戦していくことを掲げる。

パートナー募集としては、JTBが最初の手をあげたが、岩谷技研としては、フライト装置の開発を行うものの、宇宙遊覧に関連する技術やサービスの開発については、同社以外の国内企業を中心として、ともに作り上げていく必要があるとし、JTBのような旅行のための窓口のほかに、将来的にはアパレルや保険、船舶など、さまざまな分野からの参加を促すとしている。

  • 手軽に宇宙に行けるようになる
  • 手軽に宇宙に行けるようになる
  • 手軽に宇宙に行けるようになることで、新たな市場創出が期待されるようになる

現在、予定されているフライトは、北海道の十勝地方から、2人乗りのキャビンを有する気球で2時間をかけて高度25000mまで上昇し、そこで1時間滞在。その後、1時間かけて降下し、海に着水するといったもの。着水地点は事前のシミュレーションなどを含め、割り出されており、速やかに船による迎えが付近のポイントで待機する状態にするという。

また、将来的にはより大型の77m級気球と6人乗りキャビンでのサービス提供も目指すとしており、順次、開発をしていくとする。

  • 岩谷技研のマイルストーン

    岩谷技研のマイルストーン

なお、2023年度の宇宙遊覧体験費用は約2400万円(別途、滞在地への移動・宿泊等の費用が必要)としており、応募資格は申し込み時点で満15歳~65歳(未成年は保護者の同意が必要)、身長150cm~190cm(基礎疾患を有し、通院・入院している人は参加不可)としている。また、今回の発表に併せて岩谷技研では、T-10 Eartherを1億円で販売するとしているほか、宇宙遊覧を待つ間、熱気球体験やパラシュートでの降下体験、水上での着水体験、地上でできる無重力体験などの宇宙に関連するアクティビティも別途用意するともしている。

加えて、2024年度以降については、2023年度の取り組みを踏まえ、打ち上げ場所の拡充や募集スケジュールなどについては検討していきたいとしている。

  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」
  • 2人乗りキャビン「T-10 Earther」。1席はパイロットが座ることとなる。容積は2500Lで、2023年1月6日に完成したばかりだという。キャビンのハッチは天井側に開く方式。フライト中は上空外気はマイナス80℃近くまで下がるが、ハッチをクローズした状態のキャビン内は断熱されており、地上と同程度の温度に保たれるという。T-10 Eartherの左に写っているのは実証実験用気密キャビン「TYPE-5(通称:MILLON)」と「TYPE-3(通称:CAPSULE)」

2人乗りキャビン「T-10 Earther」の内装の様子