キヤノンは2月21日、半導体製造における露光プロセスの前にウェハの高精度アライメント計測を行うことで、露光装置の生産性を向上させるウェハ計測器「MS-001」の発売を開始したことを発表した。

  • 高精度ウェハ計測器「MS-001」の外観

    高精度ウェハ計測器「MS-001」の外観 (画像提供:キヤノン)

同装置は、ウェハ上に付与される計測点が数百点以上に及ぶ露光プロセスの際に、露光装置の内部で個別にアライメントマークの計測を行うのではなく、その前段に位置し、アライメント計測の大部分を一括計測することで、露光装置内のアライメント計測の負荷を下げ、露光プロセスのスループットを改善させることを可能とするもの。エリアセンサを採用したアライメントスコープを搭載することで、多画素での計測が可能になり、低ノイズを実現。従来のラインセンサではノイズで見えなかったアライメントも捕捉できるようになったとする。

  • 回路パターンを形成するレイヤによっては、アライメントマークが数百点に増加することも増えてきた

    回路パターンを形成するレイヤによっては、アライメントマークが数百点に増加することも増えてきており、それを露光装置内のアライメント計測で行うと時間がかかり、前のウェハの露光処理が終わってしまっていると、その間の生産性が低下することが課題となっていたという (画像提供:キヤノン)

また、新たにアライメントスコープ用の高出力光源を開発。従来はある色フィルターで白い光を部分ごとに切り出していたため、その可視光の切り出し幅が広く、計測にはあまり向いていなかったという。そうした課題の解決のために開発された新光源は、従来光源と比べ出力が数十倍向上したほか、より狭い幅での可視光の切り出しも可能となったとする。加えて、露光装置内での計測と比べ1.5倍の波長域を確保することができるようになり、ユーザーが任意の波長でアライメント計測を行うことも可能となったとしている。

さらに、同社が2022年9月に発売したソリューションプラットフォーム「Lithography Plus」と連携させることで、露光装置やMS-001の稼働状況に関する情報が集めることが可能となり、半導体デバイスの製造プロセスにおいてMS-001が取得している計測データとLithography Plusに集めた情報を照らし合わせモニタリングすることで、ウェハ上のアライメント情報の変化を検出し、半導体露光装置での自動補正も可能とするという。

MS-001は300mmウェハのみという制限はあるものの、キヤノン製露光装置のみならず、他社の露光装置の前段に配置することも可能。波長もEUV、ArF、液浸ArF、KrF問わずで、MS-001で大部分の計測を実施。その後、レジストの塗布を経て露光装置にウェハを投入し、ウェハ温度の変化に伴うウェハの伸びやどう置かれたか、といった最低限の計測だけで、露光プロセスに移ることができる。このため、従来の露光装置内ですべて計測した場合に比べて数倍のスループット向上が見込めると説明している。

なお、どの波長でも対応できるため、ロジック、メモリの区別なしに適用することが可能。また、スループットの向上を図りたい多量少品種の生産のみならず、少量多品種少ロット生産においても、低頻度での生産に伴うプロセスコンディションの再測定で必要となるリワーク処理を行わずに、露光前に歪みなどが把握できるため、CoO(Cost of Ownership)の低減を図ることが可能となると説明している。