新大型ロケット「H3」1号機が17日午前、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる計画だったが、直前で中止された。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、1段機体の機器が異常を検知したため。新たな打ち上げ日は未定で、引き続き年度内を目指すという。
H3は16日夕、組立棟から約390メートル離れた発射地点に移動。同日深夜から17日未明にかけ燃料を注入し、点検を進め、午前10時37分55秒の打ち上げへと作業が進んだ。打ち上げの6.3秒前に1段エンジンが正常に起動したとみられるものの、1段機体の制御機器が何らかの原因で異常を検知。固体ロケットブースターを点火する信号を出さなかった。このため、0.4秒前に計画されたブースターの点火が起こらず、打ち上げが中止された。17日にいったん燃料を抜いて組立棟に戻し、検証する。
会見したJAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャは「今日の日を待っていただいた方、見守った方に申し訳なく思っているし、われわれもものすごく悔しい。まずは原因究明に全力を尽くす。年度内打ち上げを目指し頑張りたい」と述べた。
H3は運用中の「H2A」と、2020年に終了した強化型「H2B」の後継機。2段式の液体燃料ロケットで、1号機の全長は57メートル、衛星を除く重さ422トン。H3の最大能力はH2Bの6トンを上回る、6.5トン以上(静止遷移軌道、赤道での打ち上げに換算)。JAXAと三菱重工業が共同開発し、これまでの開発費は2061億円。1段エンジン「LE9」に新方式を採り入れるなどして効率化を進め、H2Aの基本型で約100億円とされる打ち上げ費用を半減する。
政府の衛星のほか近年、大型化が進んだ商業衛星の搭載を可能とする。2024年度まで併存して運用するH2A、小型ロケット「イプシロン」とともに、政府の基幹ロケットを構成する。
わが国の液体燃料ロケットの打ち上げ直前の中止は、1989年、H1ロケット4号機が打ち上げ2秒前に1段の補助エンジンの着火の不具合で、また1994年にはH2ロケット2号機が0.5秒前に固体ロケットブースターの1本の着火信号の異常で、それぞれ生じた例がある。
H3の1号機には先進光学衛星「だいち3号」を搭載。JAXAが2006~11年に運用した初代「だいち」の後継機で、カメラで陸地を観測する衛星。分解能を大幅に向上させており、防災や災害対応、地理情報の整備などに活用する。だいち3号には防衛装備庁の実証用「2波長赤外線センサー」も装備。弾道ミサイルの発射探知など安全保障に役立つかどうかを検証する。
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