大阪ガスと三菱重工業、日本IBMの3社は2月15日、三菱重工と日本IBMが構築を進める二酸化炭素(CO2)流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO2NNEX(コネックス)」を活用し、メタネーションで製造される合成メタンであるe-methane(e-メタン)などの製造・輸送・供給・利用といったサプライチェーン全体で発生するCO2排出量を可視化し、環境価値の取引・移転を可能とするデジタルプラットフォーム「CO2NNEX for e-methane」のデモシステムを構築したと発表した。

  • 「CO2NNEX for e-methane」のトップ画面

    「CO2NNEX for e-methane」のトップ画面

また、2022年10月から開始したCO2NNEX for e-methaneのPoC(Proof of Concept:概念実証)の実施にあたり、引き続き日本ガス協会、東京ガス、東邦ガスおよびINPEXと意見交換を行いつつ、e-methaneの普及、環境価値の確立を目指す。

CO2NNEX for e-methaneは複数事業者・地点におけるe-methane製造、供給(輸送含む)・利用に関して、CO2排出量をトラッキング・管理することでe-methaneの環境価値を定量化し、e-methaneの環境価値を切り出して移転・取引できる共通プラットフォームを目指している。

メタネーションとは、水素とCO2から都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術で、製造されるメタンはe-methaneと呼ばれる。本来であれば大気中に放出されるCO2を回収し、e-methaneの原料としてカーボンリサイクルするため、e-methaneを利用(燃焼)しても、社会全体のCO2は実質的に増加しない。

また、e-methaneは都市ガス導管など既存インフラ・設備を有効活用できることから社会コストの抑制が可能なため、効率的な脱炭素化手段として期待されているという。

現在、メタネーションを含めたCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO2を回収して燃料、化学品、建材などの製造・利用に活用すること)分野におけるCO2のカウント方法について議論されており、カーボンリサイクル燃料の1つであるe-methane分野においても検討が進められている。

都市ガス顧客に供給するe-methaneの環境価値を定量的に示すためには、サプライチェーンにおいてCO2の排出源・排出量を管理できるシステムが必要となる。

さらに、e-methaneは導管内で天然ガスと混合した状態となることから、e-methaneの生産地と需要家をデジタル空間上で接続させ、その環境価値だけを切り出して取引・移転できる共通プラットフォームが重要になると考え、昨年10月からCO2NNEX for e-methaneのPoCを共同で開始。

今回、PoCの一環として構築した同システムでは、各プラントで製造されたe-methane・天然ガスが需要家に供給される過程においてCO2排出量が可視化できる機能を構築。

  • CO2排出量の可視化

    CO2排出量の可視化

また、e-methaneの環境価値の取引を想定し、事業者ごとの環境価値残高の表示や、取引の依頼・承認を行う機能を構築した。

  • 環境価値の取引・移転

    環境価値の取引・移転

今後、同システムを広く周知し、デモを行うことで、産官学のさまざまな意見をもらいつつ、CO2NNEX for e-methaneの利用などによる効果・有効性について検証を進めていく考えだ。

現在、e-methaneの製造・社会実装に向け、メタネーションに関するさまざまな実証事業が計画されいる。3社は、今後計画されているメタネーション実証にCO2NNEX for e-methaneのPoCで得られた成果を適用することで、e-methaneの社会実装とカーボンニュートラル社会の実現に貢献するという。