日本の新型基幹ロケット「H3」がいよいよ打ち上げられる。同ロケットはもともと、2020年度の初打ち上げを目指し、2014年度より開発が進められてきたが、第1段エンジン「LE-9」に問題が見つかり、2度に渡って延期されていた。2年間待たされていたロケットファンなどにとっては、本当に「いよいよ」ではないだろうか。
打ち上げ日時は2月15日10時37分55秒。マイナビニュースTECH+取材班(いつも通り筆者1人)は少し早めに、11日に種子島入り。現地はずっと厚い雲に覆われており、たまに小雨も降るなど、イマイチな天気が続いているのがやや気がかりであるが、これから打ち上げの様子までお届けしたいと思うので、今後の記事をチェックしてもらえれば幸いだ。
機体は前日の夕方に姿を現す見込み
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は同13日、記者向けの打ち上げ前ブリーフィングを開催、H3ロケット初号機の最新の準備状況について説明した。
H3ロケットは、2022年11月7日に「実機型タンクステージ燃焼試験」(CFT)を実施。ここで見つかった課題については、すべて対処を完了したという。またイプシロン6号機の打ち上げ失敗を受け、水平展開として第2段RCSのパイロ弁の交換が決まったが、これについても2月4日に機体への取り付けが完了している。
その後、順調に準備は進んでいたが、2月6日、新たな問題が発生し、当初13日に予定されていた打ち上げが延期されていた。これは、打ち上げ当日にバルーンを飛ばして風を観測、そのデータから飛行計画を更新し、機体に書き込むシステムにおいて、確認を要する事項が見つかったため。これについては修正し、動作の確認も完了した。
ただ、気になるのは天候だ。このブリーフィングは当初、14時から開催される予定だったのだが、直前になって臨時の天候判断会議が行われたため、開始時刻が16時45分に延期されていた。今のところ、予報では打ち上げの制約になるほどではないものの、今後さらに悪化する恐れもあるので注意が必要だ。
JAXAの岡田匡史プロジェクトマネージャは、「ようやくここまで来た。このロケットが成功できるよう、最後の一瞬まで気を抜かずに頑張りたい」と、現在の心境をコメント。「自信の無いロケットを打ち上げるわけにはいかないので、やれるだけのことはすべてやってきた。準備は万端で整っている」と、自信を見せた。
今後、機体移動は14日16時より開始される予定。H-IIAでは通常、機体移動は打ち上げの半日前くらいのことが多いが、今回は初号機ということでやや早めになっており、暗くなる前に姿を見ることができそうだ。
初物ロケットの打ち上げを楽しもう
残念ながら、今回の打ち上げは平日の昼間となってしまったが、新型ロケットの初打ち上げということで、JAXAのライブ中継で見る予定の人も多いだろう。最後に、打ち上げの見所についても紹介しておこう。
H3ロケットには、いくつかのコンフィギュレーションがある。最も大きな特徴と言えるのは固体ロケットブースタ無しの形態もあることで、これだと打ち上げ時の音量(おそらくだいぶ小さくなる)や上昇する速度などの違いが感じられると思うのだが、ブースタ有りの初号機はH-IIAの構成に近く、あまり大きな変化は無いかもしれない。
ブリーフィングで打ち上げの見所を問われた岡田プロマネは、「移動発射台(ML)での立ち方の違い」と回答。H-IIAはMLの上に乗る形だったのに対し、H3は内部にめり込んだ形で搭載されている。「発射するときにズボッと抜けて飛び上がるところの印象が大きく違うのでは」と、注目ポイントを説明していた。
そのほか、ブースタの結合/分離方式がよりシンプルになった点も、H-IIAからの大きな変更点である。もし快晴であれば、地上からブースタ分離まで見られるはずであるものの、ただ、分離具合は従来と同様とのことなので、中継映像ではあまり違いは分からないかもしれない。その場合、脳内で動きを再現するなどして、分離の瞬間に注目して欲しい。
参考:結合/分離方式の違いについてはこちらを参照
しかし、H3ロケットの打ち上げは当然ながらまだ誰も見たことがないので、実際にどんな感じに見えるのかという予測は、開発の関係者であっても難しいところだ。飛んでみないとなんとも言えないため、ぜひ中継や現地で見る人それぞれの視点で、違いを見つけて楽しんでもらえればと思う。筆者もすごく楽しみにしている。