米マイクロソフトは2月10日、教育関係者向けオンラインイベント「Reimagine Education」を開催した。
同イベントでは、Microsoft TeamsやMicrosoft 365から利用できる教育業界向けの新たなサービスカテゴリーである「Learning Accelerators」(ラーニングアクセラレーター)と、Windows 11のアップデート情報が発表された。
イベントの冒頭では、米マイクロソフト 会長兼 CEO(最高経営責任者)のサティア・ナデラ氏が登場し、「今回、Microsoft 365内の学習ツールを拡張し、新しいカテゴリーを導入した。このカテゴリーで教科を横断して生徒の学習の進捗と発達、学習内容のレビュー・分析を効率化するためのツールを提供し、すべての生徒の潜在能力を最大限に引き出すことを支援したい」と語った。
Teamsで利用可能な数学の学習支援ツール「Math Progress」
Learning Acceleratorsでは、教師が生徒にリアルタイムでコーチングを行い自己学習の機会を提供する「Coach(コーチ)ツール」と、生徒が課題に取り組んだり、個別のフィードバックや指導を受けたりできる「Progress(プログレス)ツール」が提供される。
今回、従来から提供されていた音読練習ツール「Reading Progress」と「Reading Coach」に加えて、数学学習支援ツールの「Math Progress」「Math Coach」、情報リテラシー教育をサポートする「Search Progress」「Search Coach」、スピーキングとプレゼンテーションのスキルアップを支援する「Speaker Progress」「Speaker Coach」の提供が発表された。
米マイクロソフト バイスプレジデント エデュケーションマーケティングのペイジ・ジョンソン氏は、「Reading ProgressとReading Coachで生徒は読書の課題を提出し、読み損ねた単語の読み方を、その場で先生に教えてもらうことが可能だ。また、生徒の読解力や発音の流暢さについて保護者と共有できる」と説明した。
Learning Acceleratorsでは、生徒から感情のアンケートを取れるツール「Reflect」も利用できる。さまざまなツールから生徒の学習ログや活動履歴などのデータが自動収集され、「Education Insights」を用いてデータ分析可能だ。
ジョンソン氏によれば、組織全体のデータ分析が可能な「Education Insights Premium」(有償)が、無償のOffice 365 A1ライセンスを含むMicrosoft 365 Educationのすべてのバージョンで利用できるようになるという。
Math ProgressとMath Coachは、小学4年生から中学3年生の数学スキルを対象とした学習支援ツールだ。教師が数学の課題を作成して、Teamsで生徒たちに配布可能だ。生徒はTeams上で問題を解き、課題提出時には手書きした数式を画像にしてアップロード可能だ。教師は生徒に解き方に関する指導や、学習方法のフィードバックなどを行える。
Math ProgressとMath Coachは、2023~2024年度にMicrosoft Teams for Educationのプレビュー版で提供開始する予定だ。
Web検索のカスタマイズで情報リテラシーを向上させる「Search Coach」
Search ProgressとSearch Coachでは、生徒が課題に取り組むにあたって行うWeb検索をカスタマイズ機能を提供する。
例えば、Search Coachでは、「政府機関系のサイトのみを検索結果に表示」など、学習内容に関連性の高い情報源を見つけやすくする検索フィルタを設定できる。
検索結果からは広告ページを除外できる。このほかMicrosoft Bingセーフサーチがデフォルトで有効なので、検索結果はアダルトコンテンツがブロックされた内容となる。
Search Progressでは、Web検索を利用して情報収集をする練習課題を作成し、生徒が参照したWebサイトと併せて課題の進捗状況などを参照できる。生徒が検索結果のトップにあるサイトしか選択していないか、フィルタを活用してソースを探せているかなども確認できるという。
Search CoachはすでにTeams for Educationに組み込まれており、全世界で利用可能だ。2023年後半にはMicrosoft Edgeに同ツールの導入が予定されている。Search Progressは、2023年後半にプレビュー版が提供される予定だ。
プレゼン発表や話し方の改善点をフィードバック可能な「Speaker Coach」
Speaker ProgressとSpeaker Coachは、学習内容の発表時に求められるスピーキングとプレゼンテーションのスキルアップを支援するツールだ。
Speaker Progressでは、教師がスピーキングやプレゼンテーションの課題を作成し、生徒は課題を使って同ツール内でプレゼンテーションの練習を行える。
生徒のプレゼンテーションの様子は自動的に録音・録画され、教師はそのデータを基にSpeaker Coachで生徒の話すペースやピッチ、ボディランゲージ、トーク内容、「えーっと」「あのー」といったフィラーワードの使用などを評価。プレゼンテーションのポイントや、話し方の改善点などをフィードバックできる。
Speaker Coachは現在、Microsoft PowerPoint、Microsoft Teams、LinkedIn内で英語で利用することができる。Speaker Progressは、2023~2024年度にTeams for Educationでプレビュー版を提供する予定だ。
Windows 11 Pro Educationの機能アップデート
同イベントでは、Windows 11 Pro Educationで2023年3月末に提供予定の機能として、「Simple sign-in」が紹介された。同機能により、学生はGoogleなどのサードパーティサービスのIDを使って、Windowsデバイスにサインインできるという。
ほかにも2023年後半にかけては、Windowsデバイスで複数のコンテンツを比較・参照するためのワークスペースを設定できる「Snap layaouts」や、複数のファイルを同時に検索可能な「Tabbed File Explorer」が提供される。
また、生徒が目の前の課題に集中できるように、気を散らせる他のコンテンツなどを隠せる「Focus session and Do not disturb」機能や、アクセスビリティを向上させるツールとして、Windows 11搭載端末上で再生される音声コンテンツの文字起こしが可能な「Live captions」も実装される予定だ。
加えて、米マイクロソフトはAIを活用した機能をハードウェアセキュリティに追加し、セキュリティを強化する方針だという。教育業界向けには、教師がデバイスを離れるとデバイスの画面が自動的にオフになり、戻ってくると自動的に起動する機能の提供を予定している。