北海道大学(北大)、東京大学(東大)、愛媛大学は2月7日、発光・受光機能に優れたGaAs系半導体ナノワイヤを、2インチ(50mm)Si(111)ウェハ上で約7億本、前処理や後加工などが不要な単一の分子線エピタキシー法を用いて大量合成することに成功したと発表した。
同成果は、北大 量子集積エレクトロニクス研究センターの石川史太郎教授、北大大学院 情報科学研究院の村山明宏教授、同・樋浦諭志准教授、愛媛大大学院 理工学研究科、東大大学院 工学系研究科の柳田剛教授、同・長島一樹准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行するナノサイエンスとナノテクノロジーを扱うオープンアクセスジャーナル「Nanoscale Advances」に掲載された。
半導体の中でも、周期表中のIII属とV族の元素を組み合わせたIII-V族化合物半導体は、物質中でも最高峰の光電変換機能と電子移動度を持つ。だが、加熱基板上で結晶を成長させるエピタキシャル成長では、構成層の熱膨張係数差が問題となり、Si上のIII-V族半導体のエピタキシャル成長は困難だった。
しかし、小さな開口部から針状結晶を形成させるナノワイヤでは、SiにIII-V族化合物半導体を高品質にエピタキシャル成長させることが可能だ。とはいえ、ナノワイヤを太陽電池などに応用するにあたっては、出力の面からその大量生産が求められている。エピタキシャル成長で主に用いられる、有機金属気相エピタキシーや分子線エピタキシーなどの手法では、この大量生産には不向きと考えられており、ナノワイヤを大量生産できる新たな手法の開発が試みられている。
そこで研究チームは今回、分子線エピタキシー法において、構成元素であるGaの自己触媒効果を用いることで、市販のSiウェハ上に前処理を一切必要とすることなく、適切な結晶作製条件を用いるのみでデバイス応用可能な高品質ナノワイヤを簡便かつ大量に合成する手法を開発することにしたという。