産業ガス大手のエア・ウォーターは、拡大を続ける半導体産業に向けて、グループが保有する事業と技術を集約統合し、半導体事業の強化を図ることを目的にエレクトロニクス事業の統合再編を進めている。
この統合再編は主に、「半導体デバイスメーカーに対する産業ガスや特殊ケミカルの供給事業」と「半導体製造関連機器装置事業」の2つに機能を分け、それぞれの事業領域における事業推進のための中核事業会社2社を新設し、グループの事業機能をそれぞれ集約統合することが掲げられている。
半導体メーカー向け特化のエア・ウォーター・エレクトロニクス
半導体メーカー向けには、中核事業会社「エアウォーター・エレクトロ二クス」を2023年1月に設立。4月1日付で、エア・ウォーターの大型バルクガス事業と機器装置分野を除く半導体エレクトロニクス関連事業(半導体産業向けガスやケミカル)を同社に移管するとともに、関連事業会社であるエア・ウォーター・ダイオーを吸収合併により統合するという。
一方の装置事業としては、2023年1月3日付で、日本パイオニクスの商号を「エア・ウォーター・メカトロニクス」に変更。4月1日付で、エア・ウォーターの機器装置分野を同社に移管するとともに、関連事業会社であるエア・ウォーター・ベルパールの機器装置事業およびエア・ウォーター・プラントエンジニアリングのガスアプリケーション機器製作事業を会社分割により移管する予定としている。
また、併せて新会社はエア・ウォーターが保有する日本電熱およびメカトロ・アソシエーツの全株式を取得し、両社を完全子会社化するとしている。
2023年4月以降は、この組織再編により、ガスやケミカルを扱う「エア・ウォーター・エレクトロニクス」と、それらを扱う装置を製造する「エア・ウォーター・メカトロニクス」の2本の柱で半導体産業への拡販攻勢を仕掛けることとなる。
エア・ウォーター・マテリアルが台湾ガスメーカーを子会社化
このほか、エア・ウォーター傘下の化学工業薬品などの専門商社エア・ウォーター・マテリアルは2月6日、半導体関連ガス事業を手がけ、2022年3月に6250万ドルの出資を行っていた台湾の宏広新技について、同社が実施した新たな第三者割当増資を引き受ける形で1億8000万NTドルで同社株式を取得し、持ち株比率を50.1%まで拡大させ子会社化したことを発表している。台湾半導体メーカーへのガス供給事業強化が目的だという。
エア・ウォーター・マテリアルによると、宏広新技は台湾半導体メーカー各社の増産の動きを受けてガス供給事業を強化しており、現在、台南科技工業区でガス精製プラントの建設を進めており、2023年3月に完工する予定だという。同プラントでは、炭酸ガスを月間600トン、亜酸化窒素を同80トン精製可能で、フッ素系ガス倉庫も備え、周辺の先端半導体工場へのガス供給事業を強化していく考え。エア・ウォーターでは、この子会社化により、台湾はもとより、日本国内も含めた世界各地の半導体メーカーに対して、半導体関連ガスのほか、特殊ケミカル材料やガス精製装置といった周辺分野を含めて提案を強化していくとしている。
台湾では、半導体メーカー各社のファブ増設が活発化しており、これに合わせて日本材料メーカーの台湾進出、台湾工場増設、関連台湾企業買収などが活発化してきている。