IDC Japanは2月6日、国内の産業用メタバース/デジタルツイン市場の動向の調査結果を発表した。ここでは、同市場の発展ステップや普及シナリオを示している。
同調査結果によると、国内の産業用メタバース/デジタルツイン市場は、機器の3Dデジタル・データ共有から物理世界の情報取得、仮想空間への人の参加、シミュレーションと最適化を経て自律化へ向かうステップで発展し、これによってより良い働き方、より高い生産性、CO2排出量の削減、安全安心な社会などを実現することがわかったという。
同市場の発展の重要な鍵となるのが、3D CAD、IoT、XR(eXtended Reality、AR/VR/MRの総称)を含む現実世界と仮想世界をデータでつなぐ技術と、仮想世界でこれらをモデル化するためのデジタルツイン基盤技術だと同社は指摘する。
なおデジタルツインとは、現実世界の情報を基に仮想世界へ双子を構築し、多様なシミュレーションを行うもの。
世界の潮流としては、デジタルツインを用いて機械や設備が自律的に最適制御する世界を実現する動きが加速しているといい、最近は、デジタルツインを推進してきた一部のベンダーが、メタバース・ブームに乗ってデジタルツインを産業用メタバース(Industrial Metaverse)と言い換えるようになっているとのことだ。
産業用メタバース/デジタルツイン技術の普及シナリオとしては、大手CADユーザー企業から大手設備系企業、ものづくり系/施設系企業、交通/物流企業や地域などへの市場の広がりが考えられるという。
初期の主要顧客は、社内に設計と生産の両部門を有する大手製造業や大手建設業者(ゼネコン)だが、この時点では市場の広がりはまだ限定的。
その後、これら初期の顧客が、産業用メタバース/デジタルツインの構築に必要なデータを彼ら自身の顧客へと引き継ぎ、引き継いだ顧客が自社の保有する建物やそこで使用する装置などの運用に産業用メタバース/デジタルツインを使用するようになると、市場は急速に拡大するという。
さらに、これらを人流、交通流、物流、サプライチェーンなど広域のデジタルツインなどと組み合わせることで、社会全体のデジタルツイン化が可能になる。
このようなデジタルツイン上で高度なAI(人工知能)やシミュレーション機能の利用によるロボットや設備の自律的な運用を実現することで、より良い働き方、より高い生産性、CO2排出量の削減、安全安心な社会が実現すると同社は考える。
同社Infrastructure & Devicesリサーチマネージャーの小野陽子氏は、「労働力不足が深刻化する中、企業は、人とロボットの協働、人同士のコレボレーションの円滑化、働く人の安全性や快適性向上などを通じて、より生産性が高くより魅力的な労働環境を模索する必要がある。産業用メタバース/デジタルツインは、そのための有効なツールとなるであろう」と述べている。