矢野経済研究所は2月6日、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や将来展望、サービス提供事業者の動向などを明らかにした。
同レポートは、2022年10月~2023年1月に自治体向けソリューションを提供するITベンダーおよび自治体を対象に実施した、国内の自治体向けソリューション市場に関しての調査結果に基づく。
市場概況は、2021年度の自治体向けソリューション市場は事業者売上高ベースで7,256億3,000万円、前年度比7.2%増と推計。新型コロナウイルスに関連して、特に自治体向けのBPOサービスが大きく拡大したほか、コロナ対応に関するシステムの構築・導入も増え、市場を押し上げた。コロナ禍による需要増は2020年度から始まっているが、2021年度は特需となった。
また、基幹系(住民情報系)システムの標準化に関しては、2022年8月に政府が標準仕様書を公開し、ITベンダーが標準仕様準拠システムの開発に着手している段階で、2023年1月時点ではまだ市場規模に対する影響はないとした。
政府はシステムコストの削減などを目的として、全自治体の基幹系システムを2025年度末までに標準化仕様に準拠したシステムに統一し、デジタル庁が調達するガバメントクラウドで運用するという方針を決定している。そのため、自治体向けソリューション市場では、2026年度以降の成長領域を開拓する動きが進んでいるという。
自治体DXは主要なターゲット領域となり、特にデジタル田園都市国家構想への注目度が高まっている。行政手続きのオンライン化などが加速しているほか、デジタル田園都市国家構想はヘルスケアや、モビリティ、観光、金融など幅広い領域でデジタル化が推進され、2023年度にはいっそうの活性化が見込まれるという。自治体向けソリューション市場は、これらの新しい取り組みによって将来的に大きく変化していく見通しだとしている。
将来展望については、2022年度にはコロナ禍に関連する需要は大幅に減少することが見込まれることから、2022年度の自治体向けソリューション市場は、前年度比3.5%減の7,002億5,000万円になると予測した。
2023年度以降、基幹系システム標準化とガバメントクラウドへの移行は大きく市場に影響し、2025年度までは自治体向けソリューション市場を押し上げる要因となる。その後、標準化・移行が終了する2026年度には、ITベンダーの基幹系システムやクラウド事業売上の減少などにより市場が縮小。同年度の自治体向けソリューション市場はいったん大きく減少し、前年度比34.3%減の6,531億円になると予測。自治体向けソリューション市場は大きな転換点を迎えているとしている。