スカイマティクスは2月2日、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状を把握し、課題を明らかにするため全国の建設業の企業に勤務する1039名を対象としたアンケート調査の結果を公表した。

その結果、建設業の特に小規模企業では「働き方改革・残業削減」の取り組みの遅れや、ICT化(デジタル化)の取り組みへの不満が高いことが明らかになったという。建設ICTツールの中でもドローンは、導入による生産性向上の寄与度が高く、未導入の企業でも導入意向が最も高いツールであり、ドローンによる建設業の生産性向上への期待が高まっていることが示唆されています。なお、同社では1月に第1弾の結果を発表しており、今回は集計結果の第2弾となる。

はじめに「あなたの勤務先で今後導入したい・導入してほしい建設ICTツールについて、重要と思う上位3つをお選びください(複数回答)」の質問に対し、最も多く挙げられたのは「ドローン」が26.0%、2番目は「据置型三次元レーザースキャナー」で19.0%、3番目は「マーキングや墨出しロボット」が18.3%となった。

建設業界内でもドローン導入のメリットが共通認識になりつつあり、ドローンの導入意向が高いという。

  • 今後導入したい・導入してほしい建設ICTツールのグラフ

    今後導入したい・導入してほしい建設ICTツールのグラフ

また「あなたの勤務先で、生産性向上に寄与したと考える建設ICTツールを、寄与度の大きいものから順番に5つまで選んでください(5つまで回答)」と尋ねたところ、これまでに導入した建設ICTツールのうち、生産性向上の寄与度が最も大きいツール(寄与度の順番で1番目に挙げられたツール)は「ドローン」で23.2%、2番目は「3D CAD、3次元データ作成・点群処理ソフト」20.9%となった。

この結果から、ドローンで取得した地形データを3D CADなどで活用することで生産性を向上させたケースが多いと想定されるという。

  • 生産性向上に寄与したと考える建設ICTツールのグラフ

    生産性向上に寄与したと考える建設ICTツールのグラフ

さらに「2024年4月には建設業でも働き方改革関連法による原則月45時間かつ年360時間以内の残業時間の制限が適用されます。あなたの勤務先は、これに向けた働き方改革・残業削減の取り組みに着手していますか(単一回答)」と聞いたところ、「着手している」は全体では41.7%となった。

1人~19人の小規模企業は17.8%。20人~299人の中規模企業は41.8%。300人以上の大規模企業は60.0%となり、小規模企業の取り組みが遅れていることが浮き彫りとなった。

小規模企業では建設ICTツールの導入率が低いことが示されており、働き方改革・残業削減を進めるために、建設ICTツールを導入する必要性が高いという。

  • 働き方改革・残業策に関する意向

    働き方改革・残業策に関する意向

加えて「あなたの勤務先のICT化の取り組みについて、あなたはどの程度満足(または不満)ですか(単一回答)との質問に対しては、全体では過半数の56.6%が「不満」と回答し、企業規模別の不満は従業員1人~19人の小規模企業は66.7%、20人~299人の中規模企業は61.9%、300人以上の大規模企業は46.4%となった。

規模が小さい企業ほど、ICT化への不満の割合が高いことが判明し、小規模企業は建設ICTツールの導入率が全般に低いことが示されている。特に小規模企業の従業員は、勤務先が生産性向上や働き方改革・残業削減を進めるために、ICT化の取り組みを進めてほしいという要望が大きいと考えられるという。

  • ICT化の取り組みの満足度

    ICT化の取り組みの満足度

一方、「あなたの会社で導入したICTツール(システム・ソフトウェア含む)について、これまでに、次の選択肢のような経験をしたことがありますか。該当するものをすべて選んでください(複数回答)」との質問については「若手社員など限られた人しか使えない」が44.9%と突出している。

約半数の企業でこのような経験があるため、建設ICTツール導入においては、「導入しても誰もが使いこなせないのではないか」という不安要素があり、建設業では若手社員やITスキルが高い人でなくても、誰もが使いやすい建設ICTツールが求められていると指摘している。

  • 建設ICTツールの導入がうまくいかなかった理由

    建設ICTツールの導入がうまくいかなかった理由

そのうえで「あなたの勤務先が生産性向上のために建設ICTツールを導入するにあたり、ネックとなる要素は何だと思いますか(複数回答)」を尋ねたところ、「初期費用」が55.5%、次いで「ランニングコスト」が41.0%、「導入しても社員が使いこなせるか分からない」が35.4%、「社内で導入を進めるICTに詳しい人材の不足」が33.9%と続く。

小規模企業は建設ICTツール導入の予算が限られているため、初期費用・ランニングコストが安価なツールが求められているほか、約半数の企業が建設ICTツールを導入しても限られた人しか使えなかった経験があるため、誰でも使いこなせるツールも求められているという。小規模企業には建設ICTツールの導入を支援する体制がほとんど整っていないことから、ICTに詳しい人材がいなくても導入できるツールが求められている。

  • 建設ICTツールの導入に対してネックになる要素

    建設ICTツールの導入に対してネックになる要素

そして「あなたの勤務先では、現場で必要な建設ICTツールを導入する際に、社内でシステムを担当する部署または担当者など、ICTに詳しい人が確認や支援をする体制がありますか(単一回答)」との問いに対しては、社内に建設ICT導入を支援する情報システム部などの体制がある割合は全体では52.3%、1人~19人の企業は17.8%、20人~299人の企業は48.7%、300人以上の企業は79.6%となった。

この結果により、小規模企業では建設ICTツールを導入する際の社内の支援体制がほとんど整っていないことがツール普及のネックの1つになっていると考えられるとの認識を示している。

  • 導入時にシステム担当部署・担当者の体制の有無

    導入時にシステム担当部署・担当者の体制の有無