ミルボンとパナソニック くらしアプライアンスは2月1日、頭髪の根元から毛先にかけてのミクロ構造の変化を解明し、毛先で顕著になるダメージ現象は根元付近から早くも始まっていることを見出したと発表した。

同成果は、ミルボン、パナソニック くらしアプライアンス、山口東京理科大学(SOCU)の佐伯政俊講師らの共同研究チームによるもの。詳細は、SOCU 第277回コロキウムにて発表された。

頭髪は太陽光に含まれる紫外線を浴びたり、ヘアカラーで髪を染めたり、ヘアアイロンを利用したりすることでダメージを少しずつ負っていき、いつしか手触りや見た目が悪くなってしまう。中でも、生え始めてから月日が経っている毛先の辺りにはダメージがそれだけ蓄積するため、手触りや見た目の悪さが目立つこともあり、ダメージに対するヘアケアに関するこれまでの研究は、主に毛先部分を想定して行われてきたという。

そこで研究チームは今回、ダメージ現象が進行する前の初期段階から継続して手入れをすることができれば、より根本的なケアにつながると考察。根元から毛先にかけての変化を調べることで、ダメージ現象の初期症状の解明に取り組むことにしたという。

具体的には、根元から毛先にかけての頭髪の変化を調べるため、根元から採取した頭髪を4分割にし、それぞれの部位についてのしなやかさの指標となる毛髪強度の調査が行われた。その結果、根元付近の10cm程度から早くも強度の低下が始まり、毛先にかけて進行していくことが判明。これにより、ダメージは毛先付近で顕著になるだけであって、実際にはすでに根元付近からすでに始まっていることが示されたという。

  • 根元から毛先までの4分割

    (a)根元から毛先までの4分割。(b)根元から毛先にかけての毛髪強度の変化 (出所:ミルボンプレスリリースPDF)

また、根元から毛先にかけての頭髪の内部のミクロ構造の変化の調査として、毛髪強度に関わるとされる毛髪組織「ミクロフィブリル」の状態が、大型放射光施設SPring-8に備えられている「マイクロビーム-小角X線散乱法」を用いて分析された。その結果、ミクロフィブリルが根元付近からダメージを受け始めていることが確認されたという。

さらにその原因を探るため、ミクロフィブリルを構成するタンパク質の状態が、同じくSPring-8の「赤外分光法」を用いて調べられたところ、根元付近からタンパク質構造の崩れが始まっていることが確認されたとする。

  • 毛髪の内部構造

    (a)毛髪の内部構造。(b)根元から毛先にかけての、ミクロフィブリルのダメージの変化。(c)根元から毛先にかけての、ミクロフィブリルを構成するタンパク質(α-ヘリックス)の分布変化 (出所:ミルボンプレスリリースPDF)

これらの結果は、根元付近から始まっている毛髪強度の低下は、「ミクロフィブリルを構成するタンパク質の構造が崩れてしまい、ミクロフィブリルにダメージが生じるため」であることを示すものであり、研究チームでは今後、今回の研究成果をもとに、ダメージの初期症状として根元付近から始まり、毛先にかけて悪化する頭髪内部のミクロ構造の変化をケアすることで、美しくしなやかな状態を維持できる高効果ヘアケア製品へと応用していきたいとしている。