日立製作所が2月1日に発表した2022年4~12月の連結業績(国際会計基準)は、営業利益が前年同期比9%増の5275億円だった。デジタルシステム&サービス事業、グリーンエナジー&モビリティ事業が好調で為替影響も業績を後押しした。
売上高にあたる売上収益は10%増の8兆1087億円、年金制度の移行に伴う費用を計上したほか、日立エナジーののれん減損による影響を受け純利益は2922億円と35%減った。同社が重要指標と定めるコア・フリー・キャッシュ・フローは485億円の赤字から749億円の黒字に転じた。
4~12月において、同社のIoT基盤である「Lumada(ルマーダ)」事業は着実に成長した。同事業の売上収益は前年同期比51%増の1兆3610億円、特にデジタルサービスの基盤となる機器や設備を手掛ける「コネクテッドプロダクト」事業は好調で同78%増の4530億円だった。次に向けた施策としては、GlobalLogicがルーマニアおよびウルグアイのデジタルエンジニアリング企業2社の買収契約を締結してデリバリー拠点を拡充することに加え、 研究開発グループがメタバース空間に運用・保守現場を構築、作業支援・教育などを通じた新たな働き方を提供、鉄道・プラントなどへの適用を目指すことを掲げている。
また、世界的に見られるカーボンニュートラルに向けたエネルギー転換の加速、再生可能エネルギーの導入の加速により、日立エナジーでは、欧州・北米・中国・南アジアなどを中心に受注が堅調に推移している。受注残は過去最高の約2兆5000億円だった。鉄道事業に関しても、カナダの地下鉄オンタリオ線やフィリピンの南北通勤鉄道システムなど、大型案件を複数受注した。
さらに同社は、日立エナジーの完全子会社化を2022年12月28日に、日立金属の株式売却を2023年1月5日に、日立物流株式のTOBを11月29日に完了(株式売却完了は22年度中を予定)し、ポートフォリオ改革を着実に進行している。
2023年3月期の売上収益は前年比3%増の10兆5500億円、純利益は同8%増の6300億円で過去最高を見込む。従来予想からそれぞれ1500億円、300億円引き上げた。長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やロシアによるウクライナ侵攻といった地政学リスクなども考慮するが、日立建機、日立金属、日立物流の株式の売却益などが通期純利益を後押しすると見込む。
2月1日にオンラインで会見を開いた執行役副社長CFOの河村芳彦氏は、「半導体不足や原材料高騰などさまざまなマイナス要因がある環境下でまずまずの決算発表ができた。会社全体の収益力が戻ってきている。世界中でエネルギーのグリーン化が進んでおり、日本のエネルギー政策にも対応していきたい」と述べていた。