コーセーは1月31日、量子コンピュータと従来型のコンピュータを組み合わせたハイブリッド型アルゴリズムにより、高速で動作する化粧品の処方自動生成システムを開発したことを発表した。
今回の研究では、量子コンピュータを用いて、目標品質に最適な化粧品処方を高速に自動生成させることができるアルゴリズムの開発を行っており、さらに開発したアルゴリズムの適用例として、角栓除去能の高さを品質指標としたクレンジング処方の自動生成と評価を実施している。
量子コンピューティング技術は発展途上であり、現時点では量子コンピュータ単体で計算される解には精度面で課題が残っている一方で、従来型のコンピュータでは莫大な候補の中から解を探すのに多くの時間を要してしまうという課題がある。そこで、量子コンピュータと従来型のコンピュータのそれぞれの利点を組み合わせたハイブリッド型の独自アルゴリズムを開発したという。
このアルゴリズムは、量子コンピュータの強みである高速な演算能力を活かし、無数にある原料の組合せの探索領域を目標品質に合わせて高速で絞り込み、従来型のコンピュータを用いて絞り込んだ中で目標品質に最適な処方を正確に生成させることができるという。これにより、これまでは実用的な時間では計算が困難であった自動処方生成を、量子コンピューティング技術を活用することで実現できるようになっている。
開発した処方自動生成システムの適用例として、角栓除去能に優れたクレンジングオイル処方の自動生成が挙げられている。角栓は毛穴の詰まりや黒ずみ、ニキビなどの要因の一つであり、シート状のケア商品による物理的な除去やクレンジングオイルなどで溶解させて除去する方法が知られている。今回は角栓を溶解させる物性値を角栓除去能として目標品質に設定し、安全に使える原料配合量を条件として、クレンジングオイル処方の自動生成を実施した。その結果、自動生成した処方はこれまでの一般的な処方よりも高い角栓除去能を示し、今回のクレンジングオイル処方の自動生成において、処理に要した時間はわずか数秒であり、量子コンピュータを用いないアルゴリズムと比較して、約900分の1に短縮を実現した。
同研究により量子コンピューティング技術を応用することで、人間の思考を超えた化粧品処方を高速で自動生成する実用性と将来性を実証した。同社では今後も継続して量子コンピューティング技術の可能性を探索するとともに、一人ひとりの顧客が求める品質に合わせた処方開発サービスなど、市場価値提案を検討していきたい考え。