横浜国立大学とNTTドコモ、日本電業工作、富士通の4社は1月30日、共同でマルチセクタアンテナを実装した5Gマルチセクタアンテナ屋内基地局装置を開発し、2023年1月27日に28GHz帯の電波を用いた通信の実証実験に成功したと発表した。同基地局装置は回路規模を従来の約10分の1に低減し、低消費電力・小型化を実現するという。
マルチセクタアンテナとは、360度全方向の空間を複数(マルチ)のエリア(セクタ)に分け、1つのアンテナ筐体からそれぞれのエリア(セクタ)に対し、同時かつ独立に電波を送受信するアンテナのことを指す。
一般に高い周波数帯の電波は直進性が強く、減衰しやすいため、電波を広範囲に届けることが困難という。このため、これまでは、全方向へ電波を届ける4つ以上の基地局アンテナが必要だったが、マルチセクタアンテナでは1つで対応可能なため基地局装置の小型化が実現するとのこと。
同実証実験では、基地局装置に5G基地局制御装置の実機を接続し、28GHz帯の電波を用いた通信で、1つのマルチセクタアンテナから全方向への電波放射と無線ビームの制御による切り替えを確認した。
同実証実験に用いたマルチセクタアンテナは、特定の方向に強く電波を送受信できる指向性アンテナ素子を放射状に12素子配置したアンテナで、テレビ放送などで用いられる八木・宇田アンテナを高周波数帯に応用したものという。
高いアンテナ利得を全方向に対して実現するマルチセクタアンテナと5Gで標準化されているビーム切り替え技術を組み合わせ、基地局装置の低消費電力・小型化を実現させた。同基地局装置のマルチセクタアンテナを天井に設置することで従来より少ない基地局で高い周波数帯の電波を部屋の隅々まで届けることができ屋内の通信環境の改善につなげるとのこと。
4社は今後、同基地局装置を用いてさまざまな環境での実証検証を行いながら、アンテナ部分の回路実装を進め、低コストでのエリア構築が可能となる基地局装置の実用化をめざす。