横河ソリューションサービスとNTTコミュニケーションズ (NTT Com)は1月30日、運転員の操作を学習したAIを用いてプラントの自動運転を実現する「オートパイロット」を「AIプラント運転支援ソリューション」の新機能として2023年2月より提供開始すると発表した。
横河ソリューションサービスが機能の企画・構築・販売を、NTT Comが機能の企画・開発 を行う。両社は年間500万円~700万円程度の費用をターゲットに販売を行うという。
両社は、2017年より共創を進め、その成果としてガイダンス表示によりプラントの手動運転を支援する「ガイダンス機能」を2022年4月より提供してきた。
しかし、国内メーカーは、高い付加価値を持つ高機能製品を、市場のニーズに合わせて変種変量生産せざるを得ない状況で、従来技術での自動運転が困難になり、手動運転を余儀なくされている状態だという。
ただ、手動運転は、運転員ごとに運転パターンが異なるため、運転品質にばらつきが生じ、少子高齢化に伴う労働人口の減少、ベテラン運転員の下で長期間経験を積むことが必要で、手動運転技術を技能伝承することが困難などの課題があった。
そこで今回、「オートパイロット」を開発した。
「オートパイロット」機能は、プラントの各種センサーから取得した温度や圧力などのデータと運転員の過去の操作履歴より模倣学習で運転員の操作を学び、AIがプラントを自動運転するもの。横河ソリューションサービスが持つ、プラントの運転に関する知見と、NTT Comが持つAI技術を組み合わせて実現した。
本機能は、運転データと操作履歴があれば、従来技術では難しかった場所の自動運転が可能で、高い安全性と継続性、自動再学習で 状況 変化に適応できるという特徴があるという。
安全性と継続性では、AIの動作保証範囲から外れたことを検知した場合、運転員に即時通知するとともに、手動運転に切り替えられる。その後、運転員の判断のもとオートパイロットに戻すことが可能だという。(AIの動作保証範囲 工場の担当者と決定)。
また、蓄積されたデータの中から現状に近い状況の操作履歴などを抽出し、高頻度に自動再学習。その結果、新たな環境に沿ったルールをAIが導き出し、生産量や設備の経年変化などの状況に応じた最適な自動運転を実現可能だという。
NTT コミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 担当部長 伊藤浩二氏は、「人の連携によって安全性と継続性を担保する。こういったことがAIには必要だ」と述べた。
両者はこの機能をJNC石油化学 市原製造所に導入し(24時間)、従来技術では制御が難しかった工程の自動運転に成功するとともに、運転員による手動操作を超える精度を確認したという。
その結果、自動運転時は、運転員操作時に比べて33%目標達成度が高く、自動運転時は、運転員操作時に比べて19%ばらつきが小さい結果が得られたという。AIが人の技術を学習するので、基本的にAIが運転員を超えることはないが、同社では制御する頻度はAIが圧倒的に多いため、目標達成度が高く、ばらつきが少なくなったと推測しているという。
両社は今後、運転員の確保や技能伝承、操業の効率化に課題を抱える企業を中心に、本機能を提供。横河ソリューションサービスは、現在展開中のPIDチューニング、高度制御導入などプラントの安全性や生産性を改善するソリューションに、さらに本機能を加える。 一方NTT Comは、本機能を応用し、漁業や農業の工程の自動化を実現するユースケース創出に取り組むという。