日本シーゲイトはこのほど、マルチクラウドの最新動向と2023年の国内事業戦略に関する記者説明会を開催した。代表取締役社長の新妻太氏は、「現在、大量のデータが生成されているが、保存されるデータとの乖離がある。乖離の問題を縮めることで、イノベーションや商機につなげることができる」と訴えた。

現在、エッジの広がりや5Gの進化により、企業のITは分散型アーキテクチャに変わっており、データは広がりながら爆発的に増えている。こうした環境で、データは複数の地域や場所、そしてプラットフォームで管理されることが必要となっている。

新妻氏は、「現在、企業では複数のクラウドが使われており、シームレスに情報が行きかう世界ができており、これがマルチクラウド。クラウドにある情報を一元管理するかが大きな課題となっており、企業はこの課題に取り組んでいる。マルチクラウドで生じる摩擦はビジネス価値の妨げになる」と説明した。

データ管理に悩む企業にとって重要なソリューションは、データ利用者とデータ生成者を結びつけてコラボレーションを可能にし、イノベーションを加速させる「DataOps」を確立することだという。

新妻氏は、DataOpsについて、「これから、DataOpsがビジネスの中核を担うようになる。共有したデータがインサイトとして利用されるようになり、その結果、イノベーションが生まれる。ビジネスのゴールを達成するために、テクノロジーの活用が不可欠になる」と説明した。

  • データを実用的な情報に変換する「DataOps」

続いて、営業本部 本部長 安河内智氏が、マルチクラウド成熟度レポートの日本における結果を紹介した。これによると、日本の企業は、自社のマルチクラウド成熟度が低いと認識していることが明らかになったという。また、日本企業は、今後2年間で分散型マルチクラウドを実現するチャンスと捉えていることも明らかになっている。

続けて安河内氏は、マルチクラウドが成熟度の高い企業が、収益でも成果を上げているという結果を示し、「マルチクラウドにおけるコスト管理が収益につながっている」と述べた。

そして、「データドリブンな経営への意識が高まることで、日本企業のイノベーションを促すことにつながってほしい。マルチクラウド成熟度レポートが、日本企業が変化を起こすきっかけになれば」と、安河内氏は語っていた。

  • マルチクラウドの成熟度が高い企業は収益の成長率が高い

さらに、安河内氏は同社のマルチクラウドへの道のりを紹介した。2022年時点で、世界にマニュファクチャリング拠点を7つ構えており、1日50TB以上のデータを利用しているという。

こうした環境の下、従来のデータセンター・アーキテクチャからパブリッククラウドへデータを移行した。また、ストレージコストの増加をうけて、自社でコントロールするため、データ用にプライベートクラウドを構築して、コスト削減に成功した。そしてLyveCloudとして製品化して、現在は同じ課題を持つ企業に提供されている。

収集したデータはAIと機械学習によって分析することで、製品開発の効率化を実現している。具体的には、品質管理の工程でデータ分析に基づくスマートサンプリングを適用するなど、事業と運用の双方においてメリットを得ているとのことだ。

  • データ分析によって、事業と運用の双方においてメリットを得ている

最後に、新妻氏が2023年の事業戦略について説明した。今年は、以下の3つのアプローチによって、ビジネスを進めていくことを掲げている。

  • データのけん引役を担う
  • 生成/保存されるデータのギャップを減らす
  • データの障壁やサイロを破る

新妻氏は注力分野として、「自律走行車(AV)」「スマート・マニュファクチャリング工場」「メディア&エンターテインメント分野」を挙げた。

また、企業はデータエコノミクスの法則により妥協せざるを得ないとして、「データにまつわる課題を解決するために、われわれは独自の地位を確立する」と、新妻氏は述べた。同氏はデータへの新たなアプローチとして、ストレージのサービスモデル「LyveCloud」を提供していることを紹介した。

「LyveCloud」はマルチクラウドを補完するソリューションと位置付けられており、専用のデータセンターが立ち上がっている。日本でもデータセンターの検証を企業と開始しており、これが終わったら立ち上げる予定とのことだ。