2023年1月25日~27日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「第15回 オートモーティブワールド」において、Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズのブースでは、CAN/LINの代わりとなる10Mbps Ethernet技術やギガビットのシリアル接続技術などの紹介が行われている。
電動化が進む自動車開発においては、E/E(電気・電子)アーキテクチャとして、ある程度まとまった機能ごとにECUを統合する「ドメインアーキテクチャ」から、セントラルECUを中心に、担当するゾーンのさまざまな役割のコンピュータが接続する「ゾーンアーキテクチャ」に移り変わると考えられている。
そこでポイントとなるのが、OTA(Over The Air)に対応したECUを中心に、車載Ethernetの採用が進んでいる一方で、末端のセンサやモーター、アクチュエータといった機器とはCAN/LINといったレガシーな通信プロトコルが用いられており、Ethernetとの間ではプロトコル変換をする必要がある。しかし、その変換のためにはある程度の処理時間が必要となり、それが遅延を引き起こすこととなる。一方で、全部Ethernet化しようと思うと、対応するマイコンとEthernetのPHY、ソフトウェアスタックを各末端のセンサなどにも搭載する必要があり、コストや設計の複雑さといった面で課題となっている。同社の提案している「10BASE-T1S E2B(イーサネットtoエッジ・バス)」は、独自IPにより、マイコンやソフトウェアスタックを搭載せずにセンサなどのエッジまでEthernetで簡単に接続することができるようになるという。これにより、OTAで行うソフトの更新をECUに限定して行うといったことなどが可能になるという。
また、ギガビットのシリアル接続技術「Gigabit Multimedia Serial Link(GMSL)」は、同社が買収したMaxim Integratedが手掛けてきた技術。1本のケーブルで最大12Gbpsのシリアル伝送を可能とするもので、ADAS技術の発達にともなって搭載される数が増加しているレーダーやカメラ、超音波などといった各種センサ群とECUの接続に用いられるという。すでに日本の自動車メーカーの中にも採用しているところがあるという。
このほか、同社ブースでは、オーディオ用ハーネスコストと重量の削減を可能とする車載オーディオバス「A2B」を活用したICC(In Car Communication)および音源分離デモ搭載車両の展示や、Linear TechnologyやMaximの吸収により、強いポジションを築いているバッテリマネジメントシステム(BMS)監視ICとして、16チャンネル・マルチセル・バッテリ・モニタ「ADBMS6830」のデモも行われている。
BMS監視ICのデモは、実際の電気自動車(EV)のBMSを模擬したもので、用いれているICもソフトウェア(マイコン側のデバイスドライバ)も製品版だという。組み合わせとしてはセル監視ICとパックモニタICを組み合わせ、ドライバを介して電圧、電流の測定と機能安全の監視を実現。ADBMS6830は同社の第6世代品で位置づけられる製品で、これまでのDCで高精度から、AC的な精度を高めることを目指して開発されたもの。具体的には、従来のマルチプレクサを用いる方式から、1chあたり2個のA/Dコンバータ(ADC)を別々に持たせる方式に変更。4.096MHzのサンプリング・レートで連続動作するため、外部アナログ・フィルタリングを減少させ、測定結果でのエイリアシングの発生を防止できるほか、ノイズ低減効果の向上も、後続のプログラマブル無限インパルス応答(IIR)フィルタによって可能だという。また、最大lifetime TME(Total Measurement Error)は±1.8mV@3.3V/cell(-40℃-+125℃)としている。