政府の情報収集衛星レーダー7号機を搭載したH2Aロケット46号機が26日午前10時50分21秒、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。衛星を所定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。衛星は5、6号機に比べ能力を向上させており、正常に機能すれば日本周辺地域などの監視能力が向上する。
レーダー7号機は設計上の寿命を過ぎた5号機の後継機で、開発費は約512億円、打ち上げ費用は約114億円。北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返すなど、日本を取り巻く安全保障上の懸念が高まる中での打ち上げとなった。岸田文雄首相は「政府は情報収集衛星を最大限活用し、今後ともわが国の安全保障および危機管理に万全を期す」との談話を発表した。
当初は25日に打ち上げを予定したが、強い寒波に伴う強風や降雪の予報のため延期していた。打ち上げを執行した三菱重工業の担当者によると、種子島の打ち上げ作業に雪が影響したことは記憶にないという。
情報収集衛星は安全保障や大規模災害対応などの危機管理のため、地上の状況を観測する衛星。北朝鮮の軍事施設などを監視する事実上の偵察衛星とされる。カメラを搭載した光学衛星と、電磁波を出してその反射を捉えるレーダー衛星がある。レーダー衛星には夜間や悪天候でも観測できる利点がある。いずれも奇数号機で性能を高めており、レーダー7号機は解像度や、撮影時の姿勢変更速度の向上などを図っている。
内閣衛星情報センターの納冨中(のうどみ・みつる)所長は会見で「わが国を取り巻く安全保障環境がますます厳しくなる中、新しい能力を持つ衛星をきっちり打ち上げられ、情報収集能力の向上、強化に貢献できうれしい」と述べた。
政府は光学、レーダー衛星各2基を維持し、地上の特定地点を1日1回観測できる態勢を整えている。運用中の衛星は設計寿命を過ぎたものを含めレーダー5基、光学3基の計8基と、観測データを地上受信局に転送する「データ中継衛星」の1基。来年度には光学8号機を打ち上げる。撮影頻度を高めるための衛星を加えた10基態勢を2028年度にも構築する。
大型ロケットのH2Aの打ち上げは21年12月以来。成功率は97.82%、20年に運用を終えた強化型のH2Bと合わせ49機連続成功となった。後継のH3初号機を来月13日に打ち上げる。H2Aは24年度までに3回が残る。政府の基幹ロケットでは、小型のイプシロン6号機が昨年10月、打ち上げに失敗している。
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