CES 2023には、多くの日本企業も出展していた。その中の1つトライポッド・デザイン社のブースが注目であった。
現在は、「すべての機器がつながるネットワークの時代」であるが、その一方で外部から遮断されたオフグリッドな状況に対応することも重要である。トライポッド・デザインの展示は、そのようなオフグリッドを目指す試みを見せていた。Tech EastのNorth Hallに出展していたトライポッド・デザインのブース自体も、オフグリッドをイメージさせるような作りであった(図1)。
あらゆる物から集電できるマイクロパワーコレクション技術
同社は、マイクロパワーコレクション(MPC:超小集電)と呼ぶ技術を展示した。異なる2本の電極材料と自然界に存在するあらゆる材料を組み合わせて微小な電気を収集する技術である。これらの材料の組み合わせで集電効率は異なるが、世界中の電気が届かない所どこでも、そこにある材料を使って電気を集めることができる。さらに、この超小集電では、天候や時間帯に左右されずに継続的に電力を得ることができ、災害時や送電網から切り離された無電環境でも電力を得ることが可能になる。僻地での通信や暮らしに必要な電気を得るエナジーハーベスト(環境発電)の新技術として期待される。
世界中のどこでも衛星通信の信号を受信できる
トライポッド・デザイン社のブースには、Arkedge Spaceも超小型衛星を出展した。「ArkEdge Space」の超小型衛星とその信号を受信するために超小型の受信機を開発し、将来、世界中の電気の無い地域でも衛星との通信を確保することを目指すとしている(図3)。そのための電源としてMicropower Collectionの様な技術が必要になってくる。
ディスプレイもオフグリッドでの稼働を目指す
トライポッド・デザイン社のブースには、ジャパンディスプレイ(JDI)社も透明ディスプレイを出展していた。今回の出展は、ネットにつながらないスタンドアローンのAIによって、ディスプレイ上でのデザイン作業を行うというデモであった。このスタンドアローンのAIもトライポッド・デザイン社の協力によるものである。さらに将来は、ディスプレイの点灯そのものをオフグリッドすなわち外部電源にたよることなく単独で駆動できることを目指したいとの説明もあった。現状のディスプレイは、大きな電力を消費しているため、これを外部電源に頼らずに点灯させるには相当な省電力化が必要であるが、将来への夢として取り組むことは、意義があるだろう。特に現在、世界中の家庭用の大画面TVは莫大な電力を消費しており、エネルギー規制の対象になっている。ここで消費される電力を削減し、その供給をオフグリッドで出来る様になれば、世界の電力事情に対しても画期的な影響を及ぼすことになる。