国際科学技術財団は24日、2023年の日本国際賞に、半導体レーザー励起光増幅器を開発して光ファイバー網の長距離大容量化に貢献した東北大学の中沢正隆卓越教授(70)と情報通信研究機構の萩本和男主席研究員(68)、光に反応するタンパク質を使い神経回路を調べる技術を開発した英オックスフォード大学のゲロ・ミーゼンベック教授(57)と米スタンフォード大学のカール・ダイセロス教授(51)の4氏を選んだと発表した。授賞式は4月13日に行う。
中沢氏と萩本氏は「エレクトロニクス、情報、通信」分野で受賞する。インターネット利用の多様化、大容量化の背景には、光通信システムの低価格化がある。中沢氏と萩本氏は1980年代に、遠距離の光通信システムの実現に必要な小型で高効率、広帯域の光増幅器を「エルビウム添加ファイバー」と「InGaAsP半導体レーザー」を組み合わせて実現した。わずか5年ほどで、この光増幅器を搭載した中継器が太平洋や大西洋を横断する海底光ケーブルをはじめ、世界を結ぶ幹線系長距離伝送網に採用された。この技術を基礎に光通信システムの発展が続いている。
同財団は「グローバルなインターネット社会を支える基幹技術である長距離・大容量光データ通信の道を拓いた」と評価した。
ミーゼンベック氏とダイセロス氏は「生命科学」分野。脳の神経細胞の活動と、行動や思考、記憶、意思決定との因果関係を明らかにすることは、神経科学の重大なテーマだ。従来は電気刺激や薬剤投与などで調べられてきたが、狙った神経細胞の活動だけを制御するのが難しかった。ミーセンベック氏は2002年、光に反応するタンパク質を特定の神経細胞に発現させ、光を当てて狙った神経細胞の活動を自在に制御する技術を開発した。生きた動物で使え、神経細胞の活動と行動との関係を直接調べられる。ダイセロス氏は05年、この技術を簡便かつ高精度にし、幅広い研究に応用できるようにした。
同財団は「この技術は神経科学研究を目覚ましく発展させ、不可欠となった。医療への応用も期待されている」と評価した。
日本国際賞は独創的、飛躍的な成果で科学技術の進歩、人類の平和と繁栄に大きく貢献した科学者を顕彰するため1981年に設立。85年に初回授賞式を行った。今回は国内外約1万5500人の科学者や技術者の推薦による327件の候補から、4氏を選んだ。2分野とも光がテーマとなったのは偶然という。
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