デル・テクノロジーズ(以下、デル)は1月24日、「Dell PowerEdge」サーバの新シリーズとして、ポートフォリオに13機種を追加すると発表し、記者説明会を開いた。

説明会に登場したデルの執行役員である上原宏氏は「今回発表する新シリーズは当社としても非常に自信を持って提供できる製品。お客様のニーズに合わせてベネフィットを考え抜いた上で設計したシリーズだ」と紹介していた。

  • デル 執行役員 製品本部長 データセンター ソリューションズ事業統括 上原宏氏

    デル 執行役員 製品本部長 データセンター ソリューションズ事業統括 上原宏氏

今回発表した新シリーズは、サーバに求められる需要を最大限に満たすような「専用設計」への対応をはじめ、運用の大部分を自動化してIT担当者の運用負荷を軽減する「インテリジェント」、サイバー攻撃に対する企業のゼロトラスト戦略を支援する「サイバーレジリエント」、電力消費の課題と自然環境に資する「サステナブル」が特徴だという。

  • 「Dell PowerEdge」の開発思想

    「Dell PowerEdge」の開発思想

最近では、米Intelの最新プロセッサ「第4世代 Xeon SP(Sapphire Rapids)」や米AMDの最新プロセッサ「第4世代 EPYC(Genoa)」などの登場により、業界全体でテクノロジーがアップデートされている。こうした最新プロセッサを搭載するとともに、Dell PowerEdgeではデル独自の性能向上も行っている。

新シリーズではPERC(PowerEdge RAIDコントローラ)の新バージョンを搭載し、従来モデルと比較して転送速度が2倍、リビルドに要する時間が約半分となった。また、BOSS(Boot Optimized Storage Solution)は従来モデルのSATAからNVMeの対応となり、暗号化に初めて対応した。その他、GPUへの対応拡大や、排熱対策としてSmart Coolingを強化した。

  • 「Dell PowerEdge」の性能比較

    「Dell PowerEdge」の性能比較

ポートフォリオの前世代(Ice Lake世代)に相当する「PowerEdge R750」と、新シリーズの「PowerEdge R760」を比較すると、AIのワークロードでは推論性能が最大2.9倍に向上しているそうだ。仮想デスクトップにおいてはVDIのアクセスユーザーが最大で20%増加、また、ERPはSAP Sales & Distributionのユーザー数を比較すると最大50%増加しているという。

  • 「PowerEdge R750」と「PowerEdge R760」の性能比較

    「PowerEdge R750」と「PowerEdge R760」の性能比較

上原氏は「今後とりわけ注力したい製品群が、AIや機械学習のワークロード向けに展開するGPU搭載の専用サーバだ」と述べ、新シリーズから4製品を紹介した。なお、これらの製品は全て2ソケットのSapphire Rapidsを搭載する。

「PowerEdge XE9680」は6Uラック型で、NVIDIA H100 SXM5 700WまたはNVIDIA A100 SXM4 500Wを最大で8基搭載可能だ。「PowerEdge XE9680」は2Uラック型、インテルのIntel Max(Ponte Vecchio)を最大4基搭載でき、同製品は空冷ではなくDLC(Direct Liquid Cooling:直接接触式液体冷却)を採用している。「PowerEdge XE8640」は4Uラック型でNVIDIA H100 SXM5 700Wを4基搭載できる。「PowerEdge R760xa」はR760のシャーシを活用したモデルで、シングルワイドのGPUを最大12基まで搭載できる。

  • AIおよび機械学習向けの製品群

    AIおよび機械学習向けの製品群

さらに、専用設計を図ったモデルも追加する。「PowerEdge HS5610」および「PowerEdge HS5620」は、OpenBMCに準拠する「Open Server Manager」を搭載した、クラウドサービスプロバイダー向けのモデル。I/O(Input/Output)に前面からアクセスできるため、データセンターでの稼働時にコールドアイルからメンテナンス可能だ。

「PowerEdge HS5610」は前後2層のストレージケージを備え、2Uの筐体に3.5インチのSASまたはSATAを最大で28本まで内蔵できる。大容量データの集約に特化しており、外部ストレージが不要となる利点を持つ。

エッジおよびテレコム向けには「PowerEdge XR4000」を展開する。奥行が355ミリメートルであるため、ラックに設置する際は2Uのスペースに縦横2つずつ並べることで、計4ノードを格納できる。壁掛けによる利用にも対応する。

  • 専用設計を強化したPowerEdge製品群

    専用設計を強化したPowerEdge製品群

デルは製品群の拡充に加えて、複数の新機能も発表した。すべてのエンタープライズ向け製品に提供しているクラウドベースの監視ツール「CloudIQ」は、AI分析に基づくパフォーマンス異常の予測の対象デバイスに、今回新たにPowerEdgeシリーズを追加した。また、仮想マシンを自動的にツリー表示できるように変更し、簡便な管理を支援する。

PowerEdgeの管理ツールであるOpenManage Enterpriseのプラグインとして提供している「OME Power Manager」では、温度と消費電力に加えて、二酸化炭素と温室効果ガスの排出量をリアルタイムに可視化しレポートする機能を追加した。

  • PowerEdge向けに追加した新機能

    PowerEdge向けに追加した新機能

デルはサーバの空冷能力の向上に資する取り組みが特徴的だ。開発チームの中に、筐体の熱対策を専門に取り組むサーマルエンジニアチームを抱えている。同チームは1Uで360ワットのCPUを空冷で対応可能な「Dell Smart Flowシャーシ」を開発し、新シリーズの一部製品に搭載した。前世代モデルと比較すると、冷却ファンの稼働を最大で52%削減している。

また、水冷に対応するマシンも拡充する方針だ。低消費電力を推進するために、HPC用途のみならず汎用向けにも水冷対応のモデルを拡大するとしている。

  • デルの冷却に関する取り組み

    デルの冷却に関する取り組み

今回新モデルの追加が発表されたDell PowerEdgeシリーズだが、「PowerEdge R7625」および「PowerEdge XR4000」はすでに出荷を開始している。その他製品については2月中旬以降に順次出荷を開始する予定だ。

デルは同社製品について「BTO(Build To Order:受注生産)方式を取っているため、その都度価格が変動してしまう」としながら、参考価格として「PowerEdge R660」は274万3352円、「PowerEdge R760」は373万8397円を示している(いずれも税別)。

  • 「Dell PowerEdge」シリーズの出荷時期と参考価格

    「Dell PowerEdge」シリーズの出荷時期と参考価格

また、説明会では、デルがas-a-Serviceモデルで提供する「Dell APEX」を拡張し、2023年後半を目安として、Dell PowerEdgeをベースとしたベアメタルコンピュートサービスの提供を予定していることも伝えられた。

同サービスはサブスクリプションモデルで提供し、ノードタイプやサーバの内蔵ストレージ容量、GPUの搭載有無、デプロイ方法、保守プラン、設置場所、契約年数を選択して使用を開始する。

  • 「Dell APEX」がコンピュートメニューの提供を開始する

    「Dell APEX」がコンピュートメニューの提供を開始する