理化学研究所(理研)、東京大学(東大)、東北大学の3者は1月20日、「磁性トポロジカル絶縁体」の積層薄膜における電気磁気効果を観測したことを発表した。
同成果は、理研 創発物性科学研究センター(CEMS) 強相関量子伝導研究チームの川村稔専任研究員、同・十倉好紀チームリーダー(東大 卓越教授/東大 国際高等研究所 東京カレッジ兼任)、同・CEMS 強相関界面研究グループの川﨑雅司グループディレクター(東大大学院 工学系研究科 教授兼任)、同・永長直人グループディレクター(東大大学院 工学系研究科 教授兼任)、東大大学院 工学系研究科の森本高裕准教授、東北大 金属材料研究所の塚﨑敦教授(理研 CEMS 強相関界面研究グループ 客員主管研究員兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の物理学全般を扱う学術誌「Nature Physics」に掲載された。
近年、数学的なトポロジー(位相幾何学)の概念に基づく分類による、新しいタイプの物質相が注目を集めており、内部が絶縁体にも関わらず、その表面には電気が流れるという特徴で知られる「トポロジカル絶縁体」などが知られている。
そのトポロジカル絶縁体に磁性元素を添加したものが磁性トポロジカル絶縁体で、同絶縁体では磁場を変化させると、その変化量に応じて決まった量の電子が輸送されることが理論研究で予測されており、その結果、磁場によって電気分極が誘起される「電気磁気効果」が生じるものと期待されている。
この磁場による電子の輸送は「ラフリン電荷ポンプ」として知られ、輸送される電荷と磁場の変化量の比例係数が基礎物理定数であるプランク定数(h)と電気素量(e)だけで表される。係数が物質に依らないことから、トポロジーに由来する普遍的な量子物理現象として重要だと考えられている。しかし試料作製の難しさから、磁性トポロジカル絶縁体におけるラフリン電荷ポンプはこれまで観測されていなかったという。
そこで研究チームは今回、薄膜結晶成長手法の分子線エピタキシー法を用いて、トポロジカル絶縁体の積層構造薄膜を作製し、それで調べることにしたという。