ソリューションプロバイダを目指すOnRobot

協働ロボットのロボットハンドなどを手掛けるデンマークOnRobotは1月20日、都内で会見を開き、さまざまなメーカーの産業ロボットや協働ロボットのコントロールを可能とするプラットフォーム「D:PLOY」を発表。これまでのロボットハンドメーカーから、今後はソリューションプロバイダとして業務拡大を目指すことを宣言した。

  • エンリコ・クログ・アイベルセンCEO

    これまではロボットハンドなどのハードウェアを提供してきたが、今後はプラットフォームの販売も手掛けることもあり、「ソリューションプロバイダ」を目指すことを宣言した。写真に写ってる人物はOnRobotのエンリコ・クログ・アイベルセンCEO。2008年から2016年の間、Universal RobotのCEOを務めたことでも知られる

説明にあたったOnRobotのエンリコ・クログ・アイベルセンCEOは、「近年、ロボットがシンプルになって、使いやすくなったという声を聞く機会が増えたが、本当に使いやすいのか?、ということを問題として提起したい。確かにロボットそのものは使いやすくなり、入手もしやすくなった。しかし、実際にロボットアプリケーションを構築して、それを展開するという作業そのものはまだ複雑なままで、それゆえにロボットアプリに精通したエンジニアも世界的に不足したままである。こうした2つの課題に対して、我々はD:PLOYを提供することで解決したいと思った」と、D:PLOY開発の背景を説明する。

同氏のこの発言だけであれば、D:PLOYは新たなロボット向けプログラミングツールという印象となるが、「プログラミングをユーザーは行わず、ロボットアプリの展開を自動化するためのツール」だと説明する。

クラウドベースのツールで、OR:BASEと呼ぶ各種産業/協働ロボットを接続するコントロールユニットに接続すると、ライセンス認証を経て、自動的に接続されたメーカーのロボットを認識。ロボットの3Dモデルも提供されるため、それを用いたワークスペースの構成や、避けるべき障害物の定義などができるほか、パレタイジングやピッキングなど行いたい基本的な作業を選択。必要な基本情報(例えばパレタイジングであれば、ボックスのサイズと重さ、パレットに何個のボックスを載せるのか、パレットのサイズはどれくらいかの4つ)を入れるだけで、D:PLOYが最適な動作を生成してくれる。同氏は、「入力情報に基づいて、ロボットの動きなど、パレタイズに必要な情報を15秒ほどで算出してくれる。この間、D:PLOYが裏側でパレタイズ作業に必要となる600~800行ほどのコードを自動で生成している」と、複雑なプログラミングやテストなどを必要としないことを強調する。

  • D:PLOYの概要

    自動的にOR:BASEに接続されたロボットの認識がされ、その後、作業領域の指定、やりたいアプリの選択、作業に必要なパラメータの入力を行うと、自動的に最適なアプリ向け動作を生成し、動作できるようになるという

  • OR:BASE

    中央がコントローラとなるOR:BASE、右側がオプションの外観

実際に同社がパートナー企業と共同で行った導入試験では、パレタイジングでは従来40時間ほどかかっていた導入時間が4時間ほどで終えられたとするほか、CNCマシンテンディングの場合でも、従来は36時間を必要としたものが6時間で終えることができたという。

  • 先行パートナーと同社が行った際の導入時間と従来の導入時間の比較

    先行パートナーと同社が行った際の導入時間と従来の導入時間の比較。パレタイジングでは最大90%、CNCマシンテンディングでは最大83%の時間を節約できることが確認されたとする

2年先までのロードマップを公開

今回のD:PLOYははじめの一歩ということで、「D:PLOY 1.0」に位置づけられ、対応メーカーは「ABB」「デンソー」「斗山(Doosan)」「ファナック」「オムロン」「Techman Robot」「Universal Robot」の7社(7社の一部の産業/協働ロボットにはまだ対応していないものもあるとのこと)。対応アプリケーションは「パレタイジング」「CNCマシンテンディング」「パッケージング」「ピックアンドプレイス」の4種類。そして、OR:BASEに接続されるハードウェアオプションとして、カメラユニット対応のための「OR:EYES」、Wi-Fi通信ユニット「OR:COM」、CNCマシンテンディング用ユニット「OR:MACHINE」の3シュルが用意されているが、このうちOR:EYSについては発売はまだ先の予定だという。

  • ロボットやロボットハンドの種類などが自動的に認識される

    接続されると、ロボットやロボットハンドの種類などが自動的に認識される

  • 自動的に最適化された動作を生成してくれる

    各種パラメータの設定などをUI上で行うと、自動的に最適化された動作を生成してくれる

  • D:PLOYの構成

    D:PLOYの構成。基本となるOR:BASEとオプション3製品が提供される予定

  • OR:BASEのインタフェース部

    OR:BASEのインタフェース部。無線通信用のアンテナが付いているので、OR:COMは不要な気もするが、よりしっかりとした通信を確立することが可能だという

同社はD:PLOYについて、「今後、6~8か月スパンでアプリを追加していく」(同氏)との考えを示しており、次のアップデートとなる「D:PLOY 1.1」では射出成型機、プレスブレイク、スタンピング、デパレタイジング、デパッケージングに対応する予定。その次は「D:PLOY 2.0」、「D:PLOY 2.1」そして「D:PLOY 3.0」と段階的に機能を拡張していくことを計画している。

  • D:PLOYのロードマップ

    D:PLOYのロードマップ

代理店経由での販売をなるため、オープンプライスとなるが、ざっくりとしたところだが、見積もりで変わってくるものの、ライセンス料が60~70万円程度、OR:BASEが20万円ほどと予想されており、ライセンスについては、基本は年間契約だが、今回は初回リリースなので、もう少し長めの契約になるという。また、ライセンスが切れたとしても、それまでに作成したアプリについては継続して利用が可能で、新たなアプリの構築などをしなければライセンス料なしでも使用できるとしている。

  • D:PLOY 1.0で提供される4種類のアプリのデモ
  • D:PLOY 1.0で提供される4種類のアプリのデモ
  • D:PLOY 1.0で提供される4種類のアプリのデモ
  • D:PLOY 1.0で提供される4種類のアプリのデモ
  • D:PLOY 1.0で提供される4種類のアプリのデモ

OnRobotのD:PLOYを用いたCNCマシンテンディングのデモの様子

OnRobotのD:PLOYを用いたパレタイジングのデモの様子

ただし、注意する点として、「D:PLOYは1つのユーザーインタフェース(UI)でさまざまなメーカーの産業/協働ロボットを扱うことを可能とするが、その認証にはOnRobotのロボットハンドが使われていることが必要」だという(センサは周辺機器については同社のもの以外も使用可能だという)。

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  • OnRobotのロボットハンド各種

なお、日本市場での販売目標について同社では2023年に100台を目指すとしている。

  • OnRobot CEOのエンリコ・クログ・アイベルセン氏

    左から、OnRobot CEOのエンリコ・クログ・アイベルセン氏、同社アジア太平洋地域ジェネラルマネージャーのジェームズ・タイラー氏、OnRobot Japanカントリーマネージャーの鈴木孝氏