デル・テクノロジーズ(以下、デル)は1月20日、ネットワークビジネスを強化するため、データセンター向けネットワークスイッチ「Dell PowerSwitch Z9664F-ON」、エッジ向けネットワークスイッチ「Dell PowerSwitch E3200-ON Series」を国内ラインアップに追加することを発表し、記者説明会を開いた。

合わせて、同社はオープンソースベースのオープンネットワークOS(Operating System)「Enterprise SONiC Distribution by Dell Technologies」の機能を強化し、他社製ハードウェアにもSONiCを搭載できるようにした。

デルのネットワーク製品といえば、オープンネットワークが特徴であり、さまざまなネットワークOSを選択可能だ。また、業界標準のCLI(Command Line Interface)に対応しているため、新たに特定の技術を学ぶことなく標準的な技能でネットワークを構築できる。

  • デルのネットワーク製品の特徴

    デルのネットワーク製品の特徴

同社は2014年に業界に先駆けてハードウェアとネットワークOSを分離し、オープンネットワーク化を進めた。2020年には独自にSONiCのサポートを開始し、オープンソースによるネットワークOSの普及にも貢献している。現在ではさまざまなデータセンターやキャリア事業者においてオープンソースなネットワークの採用が進んでいるという。

さらに、2022年にはオープンハードウェアネットワークの提供を開始した。これにより、デルが提供するソフトウェアを他社ハードウェア製品でも使えるようになっている。同社は今後のネットワーク戦略について、データセンターのみならずエッジ領域も含めて、オープンネットワークのさらなる普及を目指すとしている。

  • デルのネットワーク提供の歴史

    デルのネットワーク提供の歴史

ネットワークのオープン化に向けてSONiCを提供するデルだが、SONiCは元々米マイクロソフトが開発し公開した。SONiCは2022年4月からLinux Foundationで開発が進められている。オープンソースのネットワークOSは価格を抑えながら導入しやすく、顧客からの期待も高まっているという。

デルが提供している「Enterprise SONiC Distribution by Dell Technologies」は、SONiCに対して独自のソリューションセットを構築したものだ。2022年1月にリリースしたバージョン3.5でPowerSwitch Sシリーズに対応したほか、4月リリースのバージョン4.0では拡張性向上に必要なルーティングプロトコルであるBGP(Border Gateway Protocol)や、エッジ領域に必要なPoE(Power over Ethernet)およびPoE+への対応を開始。

10月にはバージョン4.02にバージョンアップし、オープンハードウェアへの対応を開始したため、デル以外のハードウェアも使用できるようになっている。同社によると、オープンハードウェアに対応するベンダーは現在のところデルのみなのだという。

  • デルのネットワーク戦略

    デルのネットワーク戦略

現在、デルはデータセンターからエッジまでネットワーク全体に対して、ネットワークスイッチ「PowerSwitch」シリーズにより一気通貫したサポートを提案している。そこで今回製品ラインアップの拡充に至ったとのこと。

データセンター向けには、処理能力や拡張性向上に寄与するため、PowerSwitch 400G・Zシリーズの新製品として「Z9664F-ON」をリリース。一方で、エッジにおける処理能力の要求の高まりに対して、新たに「Eシリーズ」をリリースした。

  • デルがネットワーク製品を拡充した

    デルがネットワーク製品を拡充した

「Z9664F-ON」は同社の従来モデルと比較して、最大スイッチング容量(51.2テラビット / 秒)ならびにネットワークポート数(64 QSFP56-DD)が2倍に増えている。SONiC(Software for Open Networking in the Cloud)と組み合わせることで、大規模化・高性能化したデータセンターにも対応するという。価格は1800万円(税別)から。

  • 「Z9664F-ON」性能

    「Z9664F-ON」性能

エッジ向けに新リリースするEシリーズでは、「E3248P-ON」と「E3248PXE-ON」の2製品を展開。PoE給電に対応する上、SONiCによるエンタープライズ品質かつオープンソースネットワークの利点を活用して、さまざまなアプリケーションに対応可能だ。2製品の違いはダウンリンク、アップリンクの帯域幅とPoE給電能力。価格は「E3248P-ON」が240万円から、「E3248PXE-ON」が420万円から(いずれも税別)。

  • 「E3248P-ON」および「E3248PXE-ON」性能

    「E3248P-ON」および「E3248PXE-ON」性能

デルのネットワーク事業部である西澤均氏は「当社はサーバやストレージを市場に提供する上で、よりスマートかつ扱いやすいソリューションを提供するための戦略を考えている。昨今DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中で、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用も増加しており、企業内のネットワークのみならず広域ネットワークについても生産性と接続性の向上は必須。AI(Artificial Intelligence:人工知能)や画像処理技術などを搭載したサービスは今後ますます増えると考えられるため、データセンターはもちろんエッジでの新しいビジネスや新しいニーズにも対応していきたい」と述べていた。

  • デル・テクノロジーズ ネットワーク事業部 事業部長 西澤均氏

    デル・テクノロジーズ ネットワーク事業部 事業部長 西澤均氏