京都大学(京大)発ベンチャーであるFLOSFIAは1月18日、次世代パワー半導体「酸化ガリウム(Ga2O3)」とウルトラワイドバンドギャップP型半導体「酸化イリジウムガリウム」を組み合わせた構造によるジャンクションバリア効果実証に成功したことを発表した。
酸化ガリウムはSiCやGaNに続く次世代のワイドバンドギャップ半導体として実用化が期待されている。しかし、酸化ガリウムはP型層の形成が難しく、その物性を最大限に引き出すことができていないという課題があった。同社では、2016年にコランダム構造を有するP型半導体「酸化イリジウム(α-Ir2O3)」を発見して以降、新規P型半導体層のデバイス実証を進めてきたという。
そして今回、SiCダイオードでも用いられているジャンクションバリアショットキー構造(JBS構造)を酸化ガリウムデバイスに適用し、ウルトラワイドバンドギャップ半導体である「酸化イリジウムガリウム(α-(IrGa)2O3)」の薄膜をP型半導体層として埋め込み成長させることで、ジャンクションバリア効果によるリーク電流抑制の実証に成功したとする。
具体的には、酸化ガリウムn-層の一部にトレンチ構造を作製し、新規P型半導体を埋め込んで結晶成長を、独自のミストドライ法を用いて実施。チップサイズは約0.9mm程度、トレンチ構造のラインアンドスペース(L&S)の大きさは各1μmとし、作製されたJBS構造チップに逆方向電圧を印加し、酸化イリジウムガリウムの埋込構造によるリーク電流の抑制効果を確認したほか、温度を25℃から125℃に上げると、抑制効果がさらに大きくなることも確認したという。
など、同社では今回の研究成果であるJBS構造について、同社のコランダム型酸化ガリウム(α-Ga2O3)パワーデバイス「GaO」シリーズの第2世代ダイオードから適用する予定としているほか、立ち上がり電圧の低減による順方向電圧降下Vfの低減が期待できることから、これまでの特徴であった高速動作性に加えて、100kHz以下の周波数領域で用いるインバーターなど、幅広い電力変換器への適用を目指すとしている。また、将来的にはMOSFETやIGBTなどのトランジスタにも酸化イリジウムガリウムの適用を目指すとしている。