理化学研究所(理研)は1月18日、「トランス脂肪酸」など、健康を害する脂肪酸・脂質を産生する腸内細菌が肥満や高血糖といった代謝疾患を悪化させることを発見したと発表した。

同成果は、理研 生命医科学研究センター 粘膜システム研究チームの大野博司チームリーダー、同・竹内直志特別研究員(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、基礎から臨床までの代謝に関する全般を扱う学術誌「Cell Metabolism」に掲載された。

腸内細菌は、食事由来成分の一部を代謝することで低分子化合物(代謝物)を産生し、結果として食事がもたらす健康・病態への影響に関与している。そこで研究チームは今回、腸内細菌が食事由来成分に反応して産生する物質に着目し、肥満や高血糖などの代謝疾患と腸内細菌を結ぶ、新しいメカニズムを考察することにしたという。

今回の研究は、代謝疾患などとの関連性が示唆されている「Lachnospiraceae科」に属し、それを悪化させる可能性があるという細菌「Fusimonas intestini」(FI)を対象として行われた。具体的には、肥満・糖尿病患者と健常人が34人ずつ参加し、その糞便検体の調査を行ったところ、肥満・糖尿病患者ではFIの保菌率が健常人よりも2倍ほど高いことが判明したほか、保菌者のFIの菌数と空腹時血糖値や肥満度(BMI)が正の相関を示すことも明らかとなったという。

また、無菌のところに大腸菌のみを定着させたマウスと、FIと大腸菌の両方を定着させたマウスによる比較実験を行ったところ、大腸菌単独定着マウスと比較してFI+大腸菌定着マウスでは、高脂肪食の摂食時に体重と脂肪重量が増加し、血中コレステロールが悪化すること、血糖値も悪化の傾向にあることが明らかになったとする。

さらに、両マウスの糞便中のメタボローム解析を実施し、アミノ酸や糖などの水溶性代謝物および脂質代謝物(脂肪酸)の比較を行ったところ、水溶性代謝物は食事内容によらず、両マウスにおいて同じような一定のパターンが観察されたとする。

一方、脂質代謝物は高脂肪食を与えたときのみ、FI+大腸菌定着マウスで大きくパターンが異なったという。