リンクスは1月17日、産業グレードに対応したRaspberry Pi(ラズパイ) Compute Module 4 (CM4)を採用し、ソフトウェアPLC「CODESYS」をパッケージした産業用コントローラ「TRITON(トリトン)」の本格提供を開始することを発表した。
産業機器などに用いられるPLCは、大手メーカーが提供するさまざまな用途に対応可能な高価な汎用コントローラと、自社の装置や機器など特定用途に向けた安価かつ大量生産される自作コントローラに大別されるが、工場内におけるIIoT化やセンサデータの見える化など、ちょっとした用途かつ比較的数が1000台にも満たない領域が現在、増加しており、そうしたニーズを踏まえ、安価なラズパイをベースに産業グレードに対応したIOボードなどを組み合わせたTRITONの販売を決定したという。
また、その最大の特徴はCODESYSが初めから搭載されており、かつCODESYS用にチューニングされたLinux(リアルタイムカーネルバージョン)も搭載することで、ハードウェア選定、ソフトウェアやOSのインプリメンテーションといった開発の煩雑さを解消。さらにリファレンスデザインガイドやユーザーマニュアル、Webサポートなどといった開発におけるかゆいところに手が届くサポートも用意することで、顧客のスムーズな製品開発を可能としたという。
こうしたハード、ソフト、サポートの一体化を図った背景には、リンクスがCODESYSの国内代理店としてダウンロード数は伸びる一方、その用途開拓がなかなか加速していかないという点を疑問に思った点にあるという。CODESYSを利用したことがある150社ほどに、導入に関するヒアリングを実施。その結果、ハードの性能とコストの見極めが難しかったり、OS(Linux)を使いこなす必要があったり、実際に機器などに接続するところまでは行ったものの、そこでエラーが発生した際、その要因がハードなのかソフトなのかの障害切り分けができない、といった大きく3点の課題があることを確認。それらを解決できるソリューションをリンクスとして提供することを目指し、TRITONの開発が決定されたとする。
搭載されるRaspberry Pi CM4はArm Cortex-A72ベースのBroadcomのSoC「BCM2711」を採用しており、処理性能としては、前世代(第3世代)Raspberry Piと比べると4倍ほど向上。実際の同社内部での最大7軸のモーター制御負荷実験では、1000分の1秒のセンサ入力を基にした演算処理のパフォーマンス測定において、7軸であってもCPU使用率は20%以下と、十分な性能が確認されたとする。
同社としては、CODESYSを搭載したことで「タンク内の温度や振動を確認したいといったニーズや、センサがこれまで付いていなかったところに後付けしたり、(OPC Foundationで策定された国際標準規格のフィールドネットワークである)OPC UAを介して、データをダッシュボード上に表示するといった、ちょっとした用途の分野はまだまだ自動化されていないことが多い。汎用コントローラの価格が高く、そうしたちょっとした部分にそこまでコストをかけられないという課題があった。TRITONを活用することで、安価でちょっとした作業などに活用できるようになる」(同社 代表取締役の村上慶氏)と、産業機器のコアを狙うのではなく、その周辺のちょっとした作業が必要だが自動化されていない部分を狙うとしている。
そのため、価格も標準仕様で6万8000円(税別)と抑えており、低価格を武器に各種製造装置メーカーに向けて、組み込みコントローラや装置のIIoT化の実現手段として提供することを計画しており、「すでに10社ほどが先行試作品を活用しているメーカーがある(同社ソリューション営業統括責任者 ソリューションプロダクツ推進担当 シニアアーキテクトの村松啓且氏)」とのことで、今後、さらなる拡販を進めていくことで、2023年には500台を販売し、2028年には10億円規模のビジネスへと成長させたいとの意気込みを見せている。