昭和電工と昭和電工マテリアルズが2023年1月1日付で統合し誕生した「レゾナック」は1月17日、発足説明会を開催し、同社の今後の方向性などの説明を行った。

レゾナックの目指す姿は、「(従来の)石油化学を中心とした総合化学メーカーから、世界トップクラスの機能性化学メーカーへ」というもの。その実現のために、「経営力強化」と「変革と挑戦」の2つが必要だと、同社代表取締役社長 社長執行役員 最高経営責任者(CEO)の髙橋秀仁氏は語る。

  • レゾナックのCEO、CTO、CSO

    左からレゾナック執行役員CTOの福島正人氏、同代表取締役社長CEOの髙橋秀仁氏、同取締役常務執行役員CSOの真岡朋光氏

髙橋氏は、これまでの仕事人生において、さまざまな企業を見てきた中で、「日本の技術は一流だが、経営には課題が山積みであるという認識になり、世界で通用する会社を作りたいという思いができた」と語る。2015年に昭和電工(現レゾナック)に入社して、同社内に優秀な技術者が多数いること、ならびに若者が希望を持って仕事に従事していることを感じて、世界で戦える企業へと変革させたいと思ってきたという。

  • 「レゾナック」の目指す姿

    2023年1月に誕生したばかりの「レゾナック」の目指す姿 (提供:レゾナック)

そうした思いもあり、2021年に同社ならびに昭和電工マテリアルズの社長に就任して以降、「組織文化情勢」と「人材育成」を掲げ、価値観の共有やリーダーシップトレーニング、タレントマネジメント、キャリアプランニングなどの施策をHRの中心に据え、その思いを伝えるために、2022年は国内外の70拠点を行脚。社員との意識の共有を目指すタウンホールを61回、ラウンドテーブルを110回ほど実施し、1100名を超す社員と直接会話をしてきたという。

「化学メーカーの戦略は今やコモデティ化している。大手化学メーカーの誰が作っても戦略は同じところに落ち着く。差別化の要因は変革をやりきる経営陣がいるか、そしてそれをやりきれる人材がいるかどうか」という視点から、社員が1人でも多く、変革に同意してくれる同士となるべく、車座で予備原稿もなしに20代や30代の若者含め、意見交換をし、思いをぶつけあってきたという。「2023年は社員の方から、(社長のところに)回ってくることを期待している。会社の文化は確実に変化してきたと思っている。2023年は双方向のコミュニケーションに注力していく」と、レゾナックとなった2023年を、新たな一歩と位置付ける。

  • 日本の化学業界全体を取り巻く数々の課題

    レゾナックのみならず、日本の化学業界全体を取り巻く数々の課題 (提供:レゾナック)

半導体・電子材料分野に経営資源を集中

レゾナックとして、昭和電工と昭和電工マテリアルズが合併したことで、化学メーカーとしての事業規模は国内7位となり、「世界で戦えるエントリーチケットを得た」と髙橋氏は表現する。また、2020年の日立化成を買収し、昭和電工マテリアルズとして以降、ポートフォリオの入れ替えを断行。これまでにアルミ缶事業やセラミック事業、蓄電デバイス・システム事業、プリント配線板事業など、8つの事業を売却してきた。

  • 8つの事業売却を実施
  • 8つの事業売却を実施
  • 2020年以降、8つの事業売却を実施。自社の強みを生かすべく選択と集中を進めてきた (提供:レゾナック)

「レゾナックとしてのポートフォリオの見直しは、“採算性と資本効率”、“戦略適合性”、“ベストオーナー”の3つのクライテリアで進め、選択と集中を進めていく」とする。その選択と集中として、事業のコアに据えられるのが「半導体・電子材料事業」であり、同社では同事業の比率を2021年の31%(全事業の売上高合計は1兆4196億円)から、2030年には45%へと引き上げることを目指す(目標全社売上高は1.8~1.9兆円)。

  • ポートフォリオの運営指針
  • ポートフォリオの運営指針
  • ポートフォリオの運営指針 (提供:レゾナック)

「経営資源を半導体・電子材料に集中投資していく。事業部の意思決定を本社が追認する傾向が日本の企業にはあるが、その方法は必ずしも会社全体の最適ではない。部分最適の積み重ねは全体最適にならない」とし、成長性の乏しい事業で得たキャッシュも半導体・電子材料に投資を行うといった考え方を示す。

ここまで高橋氏が半導体・電子材料事業に期待をかける背景として、半導体が継続して成長を続けてきた産業である点が挙げられる。シリコンサイクルに代表されるように好不況が繰り返されてきた半導体業界ではあるが、前の不況を越えた後の好況は、前の好況よりもより市場が拡大するといったことを繰り返してきた。また、コロナ禍で進んだデジタルトランスフォーメーション(DX)に代表されるデジタル化は、より多くの電子機器の活用を人類に促すこととなる。そうした意味では、2023年初頭の現在も半導体市場は軟化傾向にあるが、その中でも好調なデバイスセグメントがあったり、アプリケーション分野があったりと、これまでのPCやスマートフォン(スマホ)の動向だけで市場が支えられてきた状況とは異なっており、半導体デバイスの出荷個数そのものは今後も右肩上がりで伸びていくことが期待される。

また、先端プロセスとしてTSMCが3nmでの量産開始をアナウンスしたが、これまでの半導体の性能向上をけん引してきたプロセスの微細化は物理的な限界が見えてきており、代わって高性能化の鍵を握る技術としてチップレットに代表される3D IC化をはじめとするパッケージング工程、いわゆる後工程(トランジスタ素子形成が前工程)に注目が集まるようになってきた。

レゾナックはそうした後工程材料分野の事業規模では世界トップクラスで、それも1つの製品でそれを実現しているわけではなく、「後工程として主要な材料は10~15種類ほどあるが、そのうち7~8種類ほどでレゾナックは高いシェアを有している。大手化学メーカーでもここまで幅広い種類の材料をSamsung ElectronicsやIntel、TSMC、Micron Technologyといった先端半導体を手掛ける半導体メーカーたちと直接やり取りし、スペックの決定を行い、材料の開発、製造を行っているのはレゾナックだけだと自負している」と髙橋氏は自社の強みを強調する。

  • 半導体材料市場におけるレゾナックの立ち位置
  • 半導体材料市場におけるレゾナックの立ち位置
  • 半導体材料市場におけるレゾナックの立ち位置。シェアトップクラスの材料を複数そろえている点が特徴 (提供:レゾナック)