日本半導体製造装置協会(SEAJ)が、2023年1月版の半導体・FPD製造装置需要予測を発表した。
それによると、米国の対中輸出規制やメモリ価格の下落に伴って、半導体メーカーがメモリ分野を中心に設備投資に対する慎重な姿勢を見せていることからSEAJでは、今回の予測では2022年度(2022年4月~2023年3月)の日本製半導体製造装置販売高を、前年度比7.0%増の3兆6840億円と予測している。また、2023年度は半導体メーカー各社が設備投資について慎重な見方を維持することから、同5.0%減の3兆4998億円にとどまると予測。2024年度にはメモリが本格回復となるほか、ロジックも堅調に投資が行われることが予想されるため、同20.0%増の4兆1997億円と予測している。
日本市場は2024年度まで好調を持続
また、半導体製造装置の日本市場販売高(日系企業および外国企業の売上高の合計)については、2022年度が大手メモリメーカーの投資などがあったことから、同5.0%増の9558億円と予測。2023年度も全体として安定した投資が見込まれ同5.0%増の1兆36億円、2024年度に至っては大手ファウンドリの投資が本格化することが期待されることから同20.0%増の1兆2043億円と予測している。
WSTS(世界半導体市場統計)が2022年11月に発表した半導体市場予測では、2022年の半導体市場規模を前年比4.4%増としているが、2023年については同4.1%減と4年ぶりのマイナス成長を予想するなど、メモリ価格の下落を反映する形でかなりの下方修正を行った。SEAJの2023年度半導体製造装置市場も、DRAMを中心とした市況悪化を受けたメモリ分野の設備投資削減によってマイナス成長となることが予想されている。ただし、多少の増減はあってもデータセンター投資やハイエンドスマートフォンの需要など、底堅く成長が続く分野に加え、自動車に搭載される半導体量の増加、5Gの普及、IoTなどの新たな市場けん引役により、中期的に半導体製造装置の需要は高いという見方に変更はない。
先端ロジックプロセスではいよいよGAA(Gate-All-Around)構造が採用されるほか、チップレットのような次世代パッケージ技術が、性能とコスト面のバランスを側面から支えてゆく。そうした技術に基づく高い演算性能と低消費電力の両立は、将来のカーボンニュートラル達成の観点からも必然とされており、持続的な技術革新が装置需要を後押しするとSEAJは見ている。
FPD製造装置はしばらく苦難の時期が続く
一方の日本製FPD製造装置市場については、2022年度はパネル需給の悪化の影響から、一部の設備導入時期が後ろ倒しとなっており、その結果、前年度比6.0%減の4520億円と予測している。また、2023年度も液晶パネル向け投資の多くが見送りとなるほか、大型投資案件そのものが少ないことから、同20.0%減の3616億円と予測している。
ただし、2024年度には第8世代(G8)基板による有機EL(OLED)投資が本格的に始まることが期待されるため、同50.0%増の5425億円と予測されている。
背景には、IT製品(パソコンやタブレットなど)へのOLEDの搭載検討が現在、進んでおり、この流れが進めば、既存のスマートフォン向けOLEDと比較して1台あたりのパネルサイズが大きくなることから、生産効率のよいG8基板での製造が求められることとなることから、装置メーカー各社は準備を進めているという。ただし、一部の製造工程では第6世代(G6)基板と比べて技術的なハードルが高くなることから、FPDの技術開発で先行する日本メーカーが手掛けるOLED製造装置の躍進をSEAJでは期待しているという。